■松村雄亮のカリスマ性、CBAの変貌、そして失踪
以後も松村は、何度も宇宙人と会見し、大異変に備えた準備を進めるための指示を受けた。
宇宙人は、「慎重に」物事を運ぶよう強調し、その後「新聞を使ってはならない」とも指示してきた。一方CBA内部には、性急に事を運ぼうとする勢力もいたようだ。こうした動きは、1960年になって「産経新聞」にすっぱ抜かれる。世に言う「CBA事件」である。
事件の責任を負う形で、松村以下CBA執行部は総辞職した。しかし、1年も経たないうちに松村は代表に復帰し、以後CBAは松村のカリスマ的な指導の下で活発な活動を展開する。
機関誌『空飛ぶ円盤ニュース』が上質な紙質の豪華版に刷新され、資生堂やソニーなど一流企業の広告も掲載されるにようになった。従来からの機関誌『空飛ぶ円盤ニュース』に加え、研究者向けと銘打った『空飛ぶ円盤タイジェスト』、年少者向けの『ジュニアえんばんニュース』、研究報告ともいうべき『CBA Report』や海外向けの『Brothers』などを続々と発刊。1962年には、アメリカからジョージ・ハント・ウィリアムソンを訪日招待し、講演会を開催している。
さらに大湯(秋田県)のストーンサークルや熊本のチプサン古墳など日本各地の古代遺跡と宇宙人の関係を主張し、大々的な現地調査を次々と実施。縄文時代の遮光器土偶が宇宙人を象ったものだという説や、輪になって手をつなぎ「ベントラ、ベントラ」と唱える「UFOの呼び出し方」もCBAが広めたものだ。こうした活動の頂点ともいうべきものが、北海道平取町におけるハヨピラのピラミッド建設である。
この計画は、「古代に地球を訪れた友好的な宇宙人(ブラザーズ)」とCBAが考えるアイヌ神話の文化神「オキクルミ」の聖地に土地を購入し、ピラミッドなどの記念碑を建造するというもので、1963年12月20日に発表された。建設には会員が手弁当で参加し、1966年6月24日には、太陽ピラミッドなどの完成を記念し、イギリスのUFO研究家ブリンズリー・ル・ポア・トレンチや在京の各国大使館代表等を招いた式典が開催された。工事は1971年まで続けられたが、その直後、松村の消息は途絶えてしまう。
なぜ松村が、会員にも詳しいことを告げずに姿を消したのか、現在も詳細は明らかではないし、その後の消息も不明だ。2000年頃、京都の小さなキリスト教団体に身を寄せたまま亡くなったという証言もある。他方、筆者などは「もしかしたら松村は、ブラザーズに連れられてUFOで他の天体へと運ばれ、そこで密かに人類の行く末を見守っているのではないか」とも妄想してしまうのである。
文=羽仁礼
提供元・TOCANA
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