加えて、2015シーズンオフに16試合出場1得点という結果を出しながらも、当時J2のギラヴァンツ北九州を契約満了となったFW大塚翔平も、トライアウトがきっかけで川崎フロンターレの目に留まり、練習参加を経て入団。当時はまだJ1優勝まであと一歩の“シルバーコレクター”だったが、強豪の一角となりつつあった川崎にあって、一時はレギュラーポジションをつかんだ。
理想的なクラブと選手の“マッチングシステム”
プロ野球のトライアウトは、最後にユニフォーム姿を家族に見せる機会という“引退試合”の意味合いも含んでいる側面が多分に含まれている。トライアウトが健全に機能していないことが課題となっていたプロ野球は、2022年から「現役ドラフト」という施策を始めたほどだ。
Jのトライアウトはその名の通り「Tryout=実技試験」として機能している。上記のような実績と素質を兼ね備えた選手が参加することによって、さらに多くのJクラブや下部リーグのクラブの強化担当が集まるという好ましいサイクルを生んでいるのだ。
多くの選手が即席チームを組み、20~30分という限られた時間の中自分のプレーをアピールする困難さを伴うが、選手獲得を狙うクラブにとっては、自クラブの戦力アップに繋がる選手を見極める貴重な機会となっている。
おそらくは、今回参加した93選手のうちの多くが、どこかのチームでプレーを続けることができるだろう。現在、JFLや地域リーグに身を置いていても、将来的なJリーグ入りを目指すクラブも多い。そんなクラブはJでの経験のある選手を求めている。クラブと選手の“マッチングシステム”としては、主催している選手会の思惑通りに事が進んでいるといえるのではないだろうか。