また、2015年以来、ロシアが支援してきたシリアを軍事大国を自負するロシアが救助できなかったことから、プーチン氏の名誉と威信が大きく傷ついたばかりか、ロシアは頼りにならない、ロシアは弱し、といったイメージが軍事大国ロシアの管轄下にあった国、地域に広がってきているのだ(「シリア政府軍保有の化学兵器は大丈夫?」2024年12月10日参考)。
アサド大統領の失脚により、ロシアの地政学的な立場は劇的に弱まったことは間違いない。世界は、ロシアがその数少ない支持者すら守ることができない、という現実を目撃した。
ロシアの弱体化のイメージは、ジョージア(グルジア)や国内のイスラム系地域、特にダゲスタンなどで見られる。実際、ダゲスタンでは騒乱が発生しており、イスラム系反政府グループがシリアでの出来事に触発され、モスクワに挑戦する動きを見せている。‘ロシアは恐れるに足りぬ’といった雰囲気がそれらの国や地域でロシア離れを加速化する気配が見られるのだ。プーチン氏にとって情況は危険水位に入ってきているのだ。
ロシアが窮地のアサド政権を支援できなかったことについて、欧米メディアは「ウクライナ戦争で兵力も武器も投入してきたロシアはシリアを軍事支援できる余裕がないからだ」と受け取っている。
肝心のウクライナ戦争では、ロシアがウクライナ東部・南部で快進撃を続け、領土を奪っているというニュースがクレムリンから流れてくるが、ヴァイマー記者は「ロシア軍はゆっくりと、しかし着実に前進しているが、自軍の損失は驚くほど多く、戦況は厳しい。軍事ブロガーたちは『巨大な人的損耗の肉挽き機』と形容し、軍の指揮部がわずかな領土のために驚くべき数の兵士を犠牲にしている」と報告している。ロシア軍はウクライナ軍をクルスク州から追っ払うことすら出来ない。その責任をとって現地の司令官が更迭されたばかりだ。
クレムリンからウクライナとの停戦交渉に応じることを示唆する情報が流れてきているが、これはロシアのトランプ次期米大統領の再登場を予想した戦略的な対応策だけではなく、ロシア軍の台所事情が無視できないからだ。