●ディルムン遺跡実見記
サウジアラビアとバーレーンとは、ずっと海で隔てられていたが、1986年に両国をつなぐ全長25キロの海上橋キング・ファハド・コーズウェイが完成した。
バーレーンには現在でも、エンキの神殿跡や古墳群などディルムンの遺跡が数多く残っている。サウジアラビア勤務が2年以上過ぎたある週末、この橋を利用して、不死の島伝説を探るべく、遺跡見学のためバーレーンを訪れてみた。
アルコール類が一切禁止されるサウジアラビアと違って、バーレーンのイスラム教はいくぶん穏やかで、街中で酒類を買うこともできれば、豚肉を売っている店まである。そのため当時は週末の木曜日の夜になると、酒目当てに大勢のサウジアラビア人がバーレーンを訪れ、橋が混雑するという事態が生じていた。そこで混雑を避けるため、出発当日は朝早く出かけ、首都リヤドから400キロほど離れたコーズウェイを目指した。
時速100キロのスピードで疾走しても4時間かかる勘定になるが、その間道路の両側には、荒涼とした砂漠や荒れ野ばかりのすさんだ光景が続く。唯一アクセントとなるのが、時折道端に横たわっている、車にはねられたらしいラクダの死骸だったりする。
出発時間を早めたおかげで、昼過ぎには日本の高速料金所のようなコーズウェイ入り口が見えてきた。通行料20サウジ・リヤルを支払い、出入国関係の書類をもらって乗り入れると、すぐに潮風の匂いが漂ってきた。
日本大使館のあるリヤドは砂漠の真ん中にあるから、海の香りをかぐだけでウキウキした気分になってくる。その上、道路の両側に広がるペルシャ湾の青い海面と、青い空との境目に向けて道路がアーチを作り一筋の線となって伸びる光景には、ある種の爽快感、そして非現実感のようなものさえ感じた。
両国の出入国管理事務所は、橋の真ん中の人工島にある。必要な手続きを済ませると、そこから先はもうバーレーンだ。コーズウェイの終点は、首都マナーマのあるバーレーン島にある。まずはディルムン時代から3000年以上にわたって造営され続けた古墳群を目指した。島内には何か所もこの種の古墳群があり、その総数は8万5000基以上と言われる。
マナーマから南に向かうハリーファ・ビン・サルマン高速道路をたどると、10キロほどのところに、ベッドタウンとして作られたハマド・タウンがある。その直前を右に折れると、道路の左側はすぐに建物のない荒れ地となった。その荒れ地一面に、盛り上がった土まんじゅうが無数に並んでいる。これが島内最大のアアリ古墳群だ。最大のものは高さ10メートルというが、ほとんどは2、3メートル程度の小さなものだ。見方によっては大きなもぐら塚が並んでいるようにも見えるが、それでもスキー競技モーグルのコースのように見渡す限り土まんじゅうが並ぶ光景はかなり壮観である。
バーレーン島の北海岸には、ディルムン時代から繰り返し使用されてきたバーレーン要塞やバルバル神殿、さらにはエデンの園の跡とされる場所も残っている。