オーストリアだけではない。隣国ドイツでもシリア難民問題で議論が湧いている。野党第一党の「キルスト教民主同盟」(CDU)のシュパーン下院議員は「シリア難民は帰国を願っている人が多い。自主的に帰国しようとする難民にはスタート基金として1000ユーロを支援すればいい」と述べていた。一方、与党社会民主党のフェーザー内相は「シリア難民の送還問題を急いで決めるべきではない」と慎重な態度を表明している。独連邦政府はシリア難民にどのように対処すべきか未決定だ。連邦内務省によるシリアへの強制送還は計画されていない。ドイツ連邦移民・難民庁(BAMF)は9日、シリア人からの4万7000件以上の未申請の難民申請を処理する作業を一時停止する」と正式に発表している。
なお、ドイツの国際法専門家たちは現在進行中のシリア人の亡命手続きを一時停止するよう勧告している。同時に、「数十万人のシリア人の迅速な帰還や国外追放は、物流上、行政上、そして法的に難しい」と説明している。
ちなみに、イタリアとイギリス両国もシリア人の亡命手続きを一時停止した。イタリアでは、メローニ首相の政権が他の欧州諸国の例に倣う形で決定を発表。イギリス内務省の広報官は「現在の状況を評価している間、シリア人の亡命申請に関する決定を停止する」と述べている。
一方、欧州委員会は、シリア難民の迅速かつ問題のない帰還が可能だという期待に対し警告を発している。「安全かつ尊厳のある帰還の条件が現在の評価では整っていない」とブリュッセルのスポークスマンは語っている。
ドイツのテレビニュースを観ていると、多数のシリア人が9日、ベルリンでアサド政権崩壊を喜んで踊ったりしている姿が放映されていた。若いシリア人の男性は「もちろん、直ぐ帰国する。シリアは自分の故郷だから当然だ」と述べていた。若いシリア女性は「嬉しい。この時が来ることを待っていた」という。テレビで映し出されたシリア人からは、「国内情勢が不明だからもうしばらく状況を見守る」といった声は聞かれなかった。ダマスカスの刑務所から政治囚人が解放されているシーンが放映された。刑務所前には息子や父親と再会するために多くの女性たちが待っていた。解放された父親を見つけた女性は大喜びで飛びついていた。