私が勤めていたゼネコンで所有していたNYのプラザホテルはトランプ氏に売却したのですが、それが正解だったと思います。あのホテルは華やかなるアメリカの歴史であり、プラザ合意という名で知れた会場でもあります。そこを日本のたかが準ゼネコンが所有するなどおこがましいのです。同様にドイツ、ハンブルグのフィヤーヤーレスツァイテンホテルとかポルトガルの古城とか、金の力に任せて買っていたのは今思えば驕りそのものであり、他国に土足で踏み入れたようなものだったという気持ちは持っています。
アメリカは魂は売らないということなのでしょう。USスチールが魂だったか私はわかりません。が、少なくとも両大統領が「生」を吹き込んだという表現は出来るでしょう。問題は残されたUSスチールの経営陣と従業員です。自立再建が難しければライバル会社を含めた第三者による資本注入が必ず出てくると思います。テスラが手を出すとは思わないですが、EVの素材産業という意味で面白い切り口ではあるのです。
一方、日経電子版のトップは日本生命がアメリカのレゾリューションライフという生命保険会社を1.2兆円で買収すると報じられています。日本の生保、損保業界はアメリカでの買収を進めており、日本資本の生保、損保会社が着実に増えています。しかし、あまりアメリカ政府として強く関与しようとしていないその差は戦略的産業か、思い入れの問題としか思えないのです。
アメリカは隣国のカナダやメキシコにも多額の関税を付保して自国経済を守ろうと企てています。トランプ氏はそのやり方が正しいと思っていて周りをイエスマンで囲み、強面で「カナダはアメリカの州」と平気で言い放つのです。
今回の日鉄のUSスチールの買収については日本政府は表には出てきませんでした。実際はどうだったのかわかりませんが、日本政府が一民間企業の買収の肩を持つわけにはいかなかったことはあるでしょう。岸田氏とバイデン氏がその件で話をした可能性はあるもののオフレコであり、我々の耳に入ってくることはありません。そして、首相が石破氏に変わったことでバイデン氏にこの気持ちをつなぐ糸が切れたことも影響しなかったとは言えません。もしも岸田氏が首相をしていたらという「たられば」すら考えたくなります。