感情調節障害に陥った人は、何らかの感情を誘発する刺激に対して、過剰に反応してしまうか、あるいは極端に抑制される傾向があります。
こうした人は例えば、ほんの些細な出来事ですぐカッとなって激しい怒りを抱いたり、感情が不安定になりやすく、急に悲しくなって泣いたり、逆に感情がほとんど喚起されず、表情に乏しくなったります。
感情が高ぶると物を投げるなどの行動をとってしまったりするのも、この症状に見られる一部です。
要するに、感情の浮き沈みが激しく、心が荒ぶると抑制できない状態になるのです。
そしてこの感情が上手く調整できないという問題は、ADHD患者でもよく見られることが報告されています。
そこで研究チームは、この感情調節障害がADHDの不注意や衝動性、多動性の根底にある中核的な症状である可能性に着目したのです。
これを明らかにするためチームは、ABCD(Adolescent Brain Cognitive Development Study)研究に参加した小児ADHD患者672名のデータを分析しています。
ABCD研究とは、米国国立衛生研究所(NIH)が主導する大規模な縦断研究プロジェクトのこと。
ここでは子供から青年期にかけての脳の発達とその認知機能への影響を理解すべく、1万人以上の子供を対象に10年にわたる長期的なデータ収集を続けています。
さらにチームはABCD研究のデータバンク以外にも、小児ADHD患者263名とADHDではない健康な小児409名を対象にデータ収集を行っています。
被験者の平均年齢は11〜12歳でした。
調査では専用の質問票を用いて、ADHD症状のスコア評価を行うと同時に、認知機能と動機づけ機能も測定。
それから感情調節障害については、保護者の回答による客観的なスコア評価を行いました。
これに加えて、MRI(磁気共鳴画像法)を使い、感情調節機能に関わる脳領域も調べています。