東京Vの観客の年齢層は、20代後半から40代と幅広く、さらに18~25歳の割合が高いという特色がある。また、初観戦のきっかけとしては「友達や家族の誘い」が最も多いという調査結果もある。

当然ながらこの世代は、J創立当初のカズ(三浦知良)、ラモス瑠偉、武田修宏、北沢豪らを擁し、黄金時代を築いた過去など目にしてはいない。東京Vの新経営陣は、過去の栄光を一旦脇に置き、新たなクラブの方向性を示した上で、「リストア(Restore=元に戻す)」ではなく、「リボーン(Reborn=生まれ変わる)」する道を選び、新たな客層の掘り起こしに成功したのだ。

もちろん今2024シーズンの躍進のみで「古豪復活」と断じることは早計だ。今季の好成績は、城福浩監督の下、24.25歳とJ1で最も若い平均年齢のイレブンを躍動させたことによるものだ。


山見大登 写真:Getty Images

FC東京と同格のライバルと呼ばれるまで

しかし早くも、今季7得点のFW山見大登には、アビスパ福岡から獲得オファーの噂が上がっており、加えて、チーム得点王(10得点)のFW木村勇大、FW染野唯月、MF松村優太といったレンタル選手も多く、来2025シーズンのチーム構成は不透明な東京V。今季の好成績によって、来季は他クラブも警戒して挑んでくるだろう。

さらに言えば、同じ味の素スタジアムをホームスタジアムとするFC東京は、4試合の国立競技場開催もあったとはいえ、平均観客動員32,189人を集め、東京V(平均20,976人)とはまだまだ差がある。順位的には7位に終わったFC東京を上回る6位だったものの、同格のライバルと呼ばれるには、もうひと頑張りが必要だ。

それでも東京Vは、充実した下部組織と、他クラブで出番に恵まれない若手をレンタルで引っ張ってくる「目」を持っている。多少の引き抜きにも動じないほどの選手間競争があるのだ。J1最低クラスのチーム人件費でも十分に戦える秘密は、ここにある。