しかし、その際にJリーグ理事会で報告された約5億4千万円とされていたスポンサー料が、実際にはその半分ほどしか入金されず、新運営会社は早々に資金ショートの危機に陥る。2010年には、Jリーグの関連会社である「株式会社ジェイリーグエンタープライズ」に株式の約98.8%が譲渡され、旧経営陣は一掃。当時Jリーグ事務局長を務めていた羽生英之氏が社長として派遣され、実質上“Jリーグ傘下”となる。

その後、2010年からスポンサーの1つとしての関係を持っていた福島県に本社を置くゼビオホールディングス株式会社がオーナー企業となるのだが、Jリーグによる“延命措置”がなければ、現在、「東京ヴェルディ」というクラブは存在していなかったかも知れないのだ。

その間、新興宗教ワールドエンドの教祖である深見東州氏が持つ関連会社や、オンラインゲーム会社の株式会社アカツキなど、次々とスポンサーが変わっていく時代が続き、経営的にも成績的にも暗黒期を迎える。

ゼビオの出資によりようやく経営が安定するかと思ったところ、今度はコロナ禍がクラブを襲う。2020年度と2021年度の2年間だけで赤字は約10億円にも上った。東京Vは、プロサッカークラブやその下部組織、女子サッカーのみならず、バレーボールやホッケー、セパタクロー、eスポーツなど、マルチスポーツスクールを展開しているのだが、その活動が全て停止させられたことが響いた形だ。

コロナ禍に苦しんでいることは株主のゼビオも同じで、東京Vの増資に当初否定的な見解を示し、再び運転資金がショートしかかる。しかし最終的にゼビオは救いの手を差し伸べ、新株予約権を行使。東京Vはゼビオの連結子会社となることで、ゼビオホールディングス副社長の中村考昭氏を社長に迎え、新体制で再出発し、同時に羽生社長が退く。

そして、地域密着型総合スポーツクラブとしての草の根活動が、コロナ禍明けに実を結ぶことになる。

東京ヴェルディ サポーター 写真:Getty Images

「リストア」ではなく「リボーン」する道