また発声ができることは、単に生理機構だけでなく、意思疎通や仲間とのコミュニケーションの可能性も示唆します。
先にも述べたように、作品によっては言語的な発話が可能なスライムが確認されているとのことから、外部刺激に対する神経制御が高度に発達していることが考えられます。
これは単なる肉食・捕食戦略だけでなく、縄張り形成や求愛行動、群れでの集合行動(キングスライム化など)に繋がる社会的戦略の存在を暗示します。
このような違う機能を持つさまざまな器官を、単一の細胞だけで再現するのは現実的ではありません。
目、口、筋肉、神経、声帯など高度に役割分担された部位を持つには、それ専門の細胞を作ったほうが効率的です。
現実の世界にも巨大な単細胞生物が存在するのは確かです。
たとえば世界最大の単細胞動物として知られる有殻アメーバーの一種は最大で数十センチにもなることが知られています。
またオオバロニアと呼ばれる海藻の一種も人間の目玉サイズになる巨大な単細胞を持っています。
同様の巨大単細胞植物としてはスーパーの海産物コーナーや野菜コーナーなどで売られている「海ぶどう」が存在します。
しかし彼らの体を調べてみると、どの部位を切り取ってもおおむね同じ構造をしており、目や口、筋肉など多様な器官に分化している様子は見えません。
また現実世界に存在する巨大な単細胞生物のほとんどは水中生活をしており、スライムのように意思をもって動き回ることはできません。
しかし見た目からわかることは、もっとあります。
次は生物学者の目を通して、見た目だけからスライムの生活様式(生態)を解明したいと思います。