ところがお小遣い制で月3万円のやりくりになると、自己投資にかける資金が捻出できなくなる。そうなれば低い単価のまま年を取り、勤務先が倒産した時点で相当に厳しい局面になる。これまで周囲の人間を見てきて、お小遣い制でビジネス収入を増やしていった人物を自分は一人も知らない。

お小遣い制とは「この先も安定的に収入が維持できる」という砂上の楼閣のような極めて脆弱な前提条件の下に作られた戦略なのだ。

金銭感覚がおかしくなる

基本的に何でもそうだが、お金も使えば使うほど熟練して使い方が上手になっていくものだ。

誰しも子どもの時は本当につまらないお金の使い方をしてしまった経験があるだろう。筆者もなけなしのお小遣いであれこれ画策しておもちゃやゲームを買って遊んでいたが、時には後悔するようなお金の使い方をしてしまったこともあった。

そして20代の社会人になると少々余裕を得て、見栄の消費といったなんの価値もない使い方をしてしまう道は誰しもは一度は通る。しかし、歳を重ねるとそうした本質的に無価値な使い方にバカバカしくなっていき、生産的な使い道、活用法を学習していくのだ普通だ。

ところがお小遣い制になるととにかくお金を使わなくなるのでお金を使うスキルが錆びついていく。その結果、待っているのは「節約」ということしか考えられなくなる未来だ。

たとえば年を取るともう友達を新しく作る、ということが難しくなるので人によっては既存の旧友を大事にメンテナンスする、ということもあるはずだ。ところがお小遣い制でお金を自由に使えず、旧友との再会も出費で渋るようになれば完全に孤立していく。

これは人間関係だけに限った話ではない。思い切った自己投資、若い頃にしかできない年齢相応の思い出づくりなどあらゆる活動をケチケチしてしまうと恐ろしいことになる。とりあえず名目上の金額はそこそこあるが、ファイナンシャルリテラシーが低く、人生経験が薄く、大して思い出もない年寄りが出来上がってしまうのだ。

通貨安、インフレ負け