全国レベルで均質な社会保障を行おうとすると、ある地域では深刻な課題となっているが別の地域では共助でどうになかっている部分もすべて公助で支えることになってしまい、理屈の上では社会保障支出は地域ごとに行うよりも膨張することになる。
ある試算では社会保険料はやめて、消費税を25%に引き上げれば良いとされている。消費税25%とは高福祉で有名なスウェーデンの水準だ。
しかし待ってほしい。20%台の消費税(=付加価値税)がある国の多くのは軽減税率を採用しており、食料品など生活必需品は8-10%の軽減税率となっていることが一般的だ。
25%もの大きな消費税は、ブランド品や高級品などに対して課税されるいわば贅沢税、あるいは消費税導入前の日本にあった物品税のような扱いである。
軽減税率なしで25%以上の付加価値税をかけている国もあるが、そういった国と比較するなら税制全体で論じないと意味がない。同じ理由で、日本の消費税率が他国より小さいからといって引き上げてよいという理屈にはならない。
また日本でも軽減税率は導入されているが、消費税を社会保険料の代替として議論する場合には消費税1%あたり2兆円という概算をされることが多く、軽減税率について考慮されていないと考えられる。
生活必需品も含めて消費税の大増税を行えば、消費税のもつ逆進性(低収入者ほど負担が大きい)が顕著にあらわれ、年金制度等で支援すべき低所得・無資産高齢者を直撃する。
「消費税は高齢者自身も払うから公平だ」という言説もあるが、消費税による税込み価格増によって、生活困窮者が最低限必要となるお金が、大きすぎる消費税によって上振れしてしまっては元も子もない。
なぜ基礎控除や累進課税、低所得者に対する納税免除などの制度がなぜあるのか。”所得の小さい人からも税を取って、また配る”のは、非効率だからだ。