AIが考え、人間がそれを実証する――
量子物理学研究の新しい時代が幕を開けました。
ドイツのマックスプランク光学研究所(MPL)と中国の南京大学の共同研究により、AIが設計した新しい実験手法によって、共通の起源を持たない独立した光子間に量子もつれを生成することが実現されました。
この方法では、従来必要とされていた「事前の量子もつれ生成」や「ベル測定」と呼ばれる特殊な測定も不要で、簡素な手法で新たな量子もつれを生成できます。
この革新的な技術は、量子通信ネットワークや量子コンピューティングの効率化に大きく貢献する可能性があります。
しかし、なぜこれが可能なのでしょうか?
そして、AIはどのようにしてこの方法を見つけ出したのでしょうか?
研究内容の詳細は2024年12月2日に『Physical Review Letters』にて掲載されました。
目次
- 究極の目的の1つ「AIによる科学的発見」につながる成果
- AIが考え人間が実証する
究極の目的の1つ「AIによる科学的発見」につながる成果
これまでの量子力学実験は人間の創造性によって組まれた巧みな実験方法によって発展してきました。
「シュレーディンガーの猫」や「二重スリット実験」など、象徴的な実験は数多くありますが、どれも高度な理論と複雑なセットアップが必要でした。
(※シュレーディンガーの猫は思考実験ですが、近年では猫の代りとなる物体を使った重ね合わせの研究が進んでいます)
物理学の偉人たちによって組まれてきた実験は、新たな量子状態の生成を可能にし、新たな理論を育み、量子コンピューターをはじめとした量子技術の実用化を後押ししてきました。
しかし特定の量子状態を生成するために実験セットを組むのは並大抵の努力では実現しません。
理論的に可能であることを現実世界で証明するには、無数の機器を上手に組み合わせて実験を行う必要があるからです。