ルーマニア憲法裁判所は6日、先月24日に実施された大統領選で不正があったとして選挙のやり直しを命じた。同国では8日、第一回投票結果を受けて首位となった親ロシア派の右翼ポピュリスト、カリン・ジョルジェスク氏と第2位のリベラル派の「ルーマニア救国同盟」(USR)所属のエレナ・ラスコー二氏との間で決選投票が行われることになっていた。
泡沫候補者のジョルジェスク氏が第一位となったことを受け、他の大統領候補者から「ロシアの支援を受けた可能性のあるTikTokキャンペーンがあった」として選挙結果に異議を唱える声が出てきた。そのため、憲法裁判所は投票の再集計を命じ、選挙管理委員会が先月29日、票の再集計を実施した。しかし、再集計で問題が発見されなかったとして、決選投票が予定通り実施されることになっていた。それが6日に入り、憲法裁判所が「第一回投票に不正があった」として、「選挙プロセスの公正性と合法性を確保するために」として大統領選のやり直しを命令したわけだ。ちなみに、ルーマニアの最高防衛評議会は「ロシアがルーマニアの世論に影響を与えようとしている」と結論づけ、「民主的な選挙プロセスに対する攻撃的なロシアのハイブリッド攻撃だ」と指摘した。憲法裁判所が選挙のやり直しを急遽決定したのは、ルーマニアの諜報機関および北大西洋条約機構(NATO)諸国の諜報機関から、選挙プロセスに対する外部からの、特にロシアによる影響を示唆した情報があったからだという。
選挙のやり直しが決まったことに対し、ジョルジュスク氏は「クーデターだ」と批判。一方、ラスコーニ氏は「民主主義を踏みにじるものだ。国は無秩序に陥っている」と批判する一方、「ロシアのプロパガンダの無制限な拡散は深刻な問題だ。私たちはクレムリンの笑いものになることを許さない」とロシアの選挙介入を批判している。ラスコーニ氏は6日公表された世論調査ではジョルジョスク氏をわずかにリードしていた。それだけに、同氏にとっては選挙のやり直しは無念だったはずだ。