アスリートが最高のパフォーマンスを見せた時、後から当人は「あの時、ゾーンに入っていた」と口にするケースがある。長らくこの“ゾーン”は1種類しかないと考えられてきたのだが、興味深いことにゾーンには2種類あることが研究にて指摘されているのだ。

■2種類のゾーン、フロー状態とクラッチ状態

 集中力が極限までに研ぎ澄まされて、今すべきことに完全に没頭している状態であるゾーン(zone)は、アスリートだけでなく楽器演奏やビデオゲームのプレイ、筆記試験などでも起こるといわれている。

 これまで長らくこのゾーンの状態は1種類しかないと考えられてきたのだが、ゾーンには2種類あることが報告されている。

 豪・サザンクロス大学の研究チームは多くのアスリートにインタビューを行い、ゾーン体験についての情報を収集した。アスリートが口にすることが多いゾーンだが、話を詳しく聞いてみると、直近に体験したゾーンには2種類あることが浮き彫りになったという。過去のゾーン体験は記憶がぼやけてしまうことが影響し、体験者自らがゾーンには1種類しかないと考えがちであることがわかってきたのだ。

 では、その“2つのゾーン”とはどんなものなのか。研究チームによると、1つは「フロー状態(flow state )」であり、もう1つは「クラッチ状態(clutch state)」だという。

超集中状態「ゾーン」に入る方法とは? “2種類のゾーン”使い分けて能力覚醒か
(画像=画像は「Science Alert」より引用、『TOCANA』より 引用)

 フロー状態のゾーンは、当事者は完全に今行っていることに没頭しており、身体がまるでオートパイロット状態であるかのように自動的に動き、意識的な努力をすることなく完全に調和した挙動を見せる状態である。

 一方、クラッチ状態のゾーンは当事者に目的が意識され、その目的を達成するために集中力を発揮して取り組んでいる状態である。ラストスパートをかけるランナーなどがこれにあたる。