兵庫県の斎藤元彦知事への内部告発を調査する県議会調査特別委員会(百条委員会)。同委員会メンバーで兵庫県議会議員の増山誠氏は「『斎藤知事に問題があった』という結論ありきの運営になっている」と指摘するなど、同委員会の運営の公正性に内部からも疑問の声が上がっている。8月に結果が公表された県職員を対象に行われたアンケートでは、回答者の約4割が知事のパワハラを見聞きしたと回答したとメディアで大きく報じられ、斎藤知事の失職への流れが強まるきっかけとなったが、このアンケートでは職員以外の人でも一人で何度でも回答を投稿できる仕様になっており、斎藤知事の問題行為を直接見聞したという回答は全体の2%ほどだったことも分かった。斎藤知事の一連の問題とバッシングが意図的につくられたものであり、テレビをはじめとする大手メディアがそれに加担した可能性も指摘され始めている。
片山前副知事「一部委員が本件告発文書の作成に関与しているとの疑惑」
斎藤知事による県職員へのパワハラや出張先などでの贈答品の受領などを訴える告発文書を受けて、県議会が百条委員会を設置したのは6月のことだった。翌7月には告発文書を作成・配布していた元県民局長が死亡。9月には県議会の各会派などが提出した斎藤知事の不信任決議案が全会一致で可決され、失職した(先月17日に投開票された兵庫県知事選挙で再選)。
百条委員会は、地方自治法100条に基づき地方議会が設置する特別委員会で、その目的は自治体の事務に関する疑惑や不祥事を調査することと定められている。今回の百条委員会は、兵庫県議会の最大会派である自民党、立憲民主党の議員が設置を求める動議を提案して可決されたもので、奥谷謙一委員長は自民党所属。
百条委員会の公正性に疑問の声が強まるきっかけとなったのが、10月25日に行われた片山安孝前副知事への尋問だった。この日の百条委員会は知事選への影響を考慮して秘密会の形態で行われ、先月22日に証人尋問の映像が公開されたのだが、斎藤知事のパワハラなどを告発する文書を配布していた元県民局長が公用パソコンに保管していたデータについて片山氏が発言を行おうとすると、奥谷委員長が一方的に制して一時中断。公開された映像では片山氏のこの時の証言の一部音声が消されているが、先月には片山氏と奥谷委員長のやり取りを録音した音声がインターネット上に流出し、その内容から百条委員会の公平性を疑問視する声が相次ぐ事態に発展している。
ちなみに片山氏は11月14日、百条委員会について以下内容の要望書を兵庫県議会議長宛てに提出しているが、テレビではほとんど報じられていない。
<本件公用パソコン内に保存された文書等の内容を調査しなければ、元県民局長がどのような意図、目的をもって本件文書を作成したのかについて十分な検証がなされたとはいえず、(略)本件公用パソコン内に保存されていたデータの内容を調査もせず、通知人に証言すらさせないという委員会の運用は極めて不可解であり、明らかに不公正と言わざるを得ません>
<(編集部追記:10月24・25日の)秘密会について、委員会側が記者会見して内容を公開しているが、そのこと自体適正と言えるか。また公表された内容は一方的な偏った内容ではなかったか>
<前知事のパワハラや贈答品疑惑について、本件文書には記載されていない疑惑があたかも事実であるかのように質問されたが、結局根拠が不確かで、中には関係者が否定することにより、事実と異なることが明らかとなったものがあった。このような質問は、証人を困惑させる誘導尋問であり、本来許されないものと考えられる>
<(編集部追記:百条委員会の)一部委員が本件告発文書の作成に関与しているとの疑惑が取り沙汰されているが、委員会の公正性の確保の見地から調査して頂きたい>
<元県民局長が使用していた公用パソコンに保存されていた文章等のデータの内容について、(略)(編集部追記:百条委員会の奥谷)委員長はその内容を知りながら委員会への開示請求をしなかったのではないか、との疑いがネット上で指摘されている。もし事実であるとすれば、委員会運営の公正性に重大な疑義を生じることになるので、調査して頂きたい>
片山氏は副知事に就いていた3月、人事責任者として元県民局長に事情聴取を行っており、元県民局長の公用パソコンに問題のある文書が保存されていたことを把握していたと話している。