では、ナラタケ属はどのようにして枯木や木材を発光させるのでしょうか。
ナラタケ属は木材を白く変色させる白色腐朽菌であり、木材中のリグニン(植物の細胞壁を構成する主要成分)を分解する能力があります。
そして一部の種では、リグニンの分解によって生成される特定の成分が、発光物質「ルシフェリン」に変換されるため、その種の菌糸束が緑色に光ります。
つまり、ナラタケ属の菌は木材のリグニンをエサに緑の光を発するわけです。
ナラタケ属に侵食された木は暗闇の中で緑色に光るため、夜の森で最初にこれを見つけた人は、さぞ驚いたに違いありません。
今回、シュワルツ氏ら研究チームは、この現象を応用し、研究室の中で光る木材を開発することに成功しました。
緑色に光る「木材と菌類のハイブリッド」の開発に成功
研究チームは、人工的に「光る木材」を生み出すために、自然界で光るいくつかのキノコを分析し、その遺伝子を解読しました。
また光る木材に向いている木材の種類も調べました。
その結果、最も効果的な組み合わせは、ナラタケ属の一種「ナラタケモドキ(学名:Armillaria tabescens)」と「バルサ材(学名:Ochroma pyramidale)」だと分かりました。
またバルサ材の中で、ナラタケモドキを十分に成長させるには、湿った環境が必要であることも分かりました。
研究チームは図のように、バルサ材のブロックに大量の水を吸収させた後、水性の培地に移して、そこで生きたナラタケモドキがバルサ材に定着するよう促しました。
そしてこの環境で3カ月間培養することで、最大の光度が得られると分かりました。
この間、バルサ材は重量の8倍もの水分を吸収し、培養後は空気(酸素)にさらされることで発光が始まります。