自然界にはキノコやイカ、ホタルなど光を発する生物が存在します。

もし、加工が可能な「木」や「木材」に生物発光を付与できるなら、私たちの生活空間はより魅力的なものとなるかもしれません。

例えば、「暗闇で光る机や椅子」「真っ暗な公園の中で輝く木の掲示板」「道筋を照らす木造フェンス」「夜に輝く木製アクセサリー」などを作ることができるでしょう。

スイス連邦材料試験研究所(EMPA)に所属するフランシス・シュワルツ氏ら研究チームは、木材と生きた菌類を組み合わせることにより、「暗闇で光る木材」を開発することに成功しました。

研究の詳細は2024年9月12日付の学術誌『Advanced Science』に掲載されました。

目次

  • 昔から知られていた自然界の「光る木材」
  • 緑色に光る「木材と菌類のハイブリッド」の開発に成功

昔から知られていた自然界の「光る木材」

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生物発光を示すキノコ / Credit:Wikipedia Commons

光るキノコやイカが存在することはよく知られています。

では、光る「木」は自然界に存在するのでしょうか。

今のところ、木そのものが生物発光を示す例は見つかっていません。

ただし、生物発光を示す菌が腐朽した木に取り付き、まるで木が光っているかのように見せる事例はあります。

こうした例は18世紀の鉱山労働者によって確認されており、彼らは光る木の棒を松明の代わりとして扱っていました。

そして1900年代には、この光が枯木や生木に発生するナラタケ属(学名:Armillaria)によって生じていることが確認されたのです。

このような、木材に生息する特定の菌類が放つ微弱な光は、以前から「フォックスファイア(Foxfire)」と呼ばれており、その名は「偽」を意味する古いフランス語の「Faux」に由来していると考えられています。

ちなみにもっと過去には、ギリシャの哲学者「アリストテレス(紀元前384年-322年)」と古代ローマの博物学者「大プリニウス(紀元23年-79年)」も、フォックスファイアについて言及しており、これが2000年以上も前から知られていた現象だと分かります。

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顕微鏡で観察した菌糸。木材のリグニンを分解することで、ナラタケ属の菌糸束は緑色に光る / Credit:Francis W. M. R. Schwarze(EMPA)_How to make wood glow(2024)