基本布陣[4-1-4-1]の山東が前半2分に最終ラインからロングパスを繰り出したことで、川崎は最前線からの守備(ハイプレス)を掻い潜られそうになったが、自陣でボールを回収し逆に速攻を仕掛ける。FWエリソンが敵陣ペナルティエリア右隅でドリブルを仕掛け、この直後にMF瀬川祐輔がシュートを放つと、山東のGKワン・ダーレイが弾いたボールをFWマルシーニョがゴールに押し込んだ(得点は前半3分)。
幸先良く先制した川崎は、その後も山東のロングボールを跳ね返し、エリソンとマルシーニョの快足FWを中心に速攻を仕掛ける。相手の守備隊形が整う前に攻めきる姿勢が窺えた。
山東のロングパスを回収しきれず2次攻撃を浴びる場面もあり、前半12分にMFシエ・ウェンノン、同36分にはFWゼカとリーによるシュートを浴びたが、GKチョン・ソンリョンが好セーブを連発。長きにわたり川崎のゴールに鍵をかけている39歳の守護神が、この日も自軍を救ってみせた。
際立った山本と河原の存在感
この日三浦とともに川崎の遅攻を支えたのが、山本悠樹と河原創の両MF(2ボランチ)。ビルドアップ時にこの2人が味方センターバックの隣などに降りたことで、山東はボールの奪いどころを定めきれず。山本と河原には山東の2インサイドハーフ、リーとシエの両MFがマークに付いていたが、川崎の2ボランチが最終ラインへ降りたときの守備の段取りまでは整備されていなかった。
三浦、山本、河原、チョンの活躍で川崎に落ち着きがもたらされると、前半41分に山本が相手GKワンのニアサイドを射抜くフリーキックを放ち、ゴールゲット。この追加点で川崎は優位に立った。
後半20分には山本のコーナーキックにジェジエウがヘディングで合わせ加点すると、同45分にも精巧なパスワークで山東を自陣へ釘付けに。途中出場の18歳FW神田奏真のクロスにFW山田新が合わせ、大勝劇に華を添えている。2017年のクラブ史上初のJ1リーグ制覇をはじめ、川崎に多くのタイトルをもたらしてきた鬼木監督の今年限りでの退任が決まっているが、この試合で証明された確かな戦術基盤が新体制下でも継承されることを願うばかりだ。