アメリカのブリンケン国務長官がウクライナ政府に対して、「より若い人々を戦闘に投入することが不可欠だ。現在、18~25歳の人々は戦闘に参加していない」と述べ、軍への動員年齢を引き下げて兵力を増強すべきだと述べた。

ブリンケン国務長官、デイビッド・ラミー外務・英連邦・開発大臣とゼレンスキー大統領(2024年9月) ゼレンスキー大統領Xより

これに対して「ウクライナのリトビン大統領広報顧問は11月28日、『欧米諸国が供与を約束した武器の到着が遅れている中で動員年齢を引き下げても無意味だ。彼らに装備させる武器がない』とSNSに投稿し、動員年齢引き下げに否定的な考えを示した」と報道されている。

人口の大減少に見舞われ、戦後も人口回復は非常に困難だと思われるウクライナは、若年層の兵役化は、避けたい。しかしすでにアメリカの大統領選挙の最中、次期副大統領のJ・D・バンス氏が、この点を批判的に取り上げ、「ウクライナ軍は年寄り過ぎる」と述べ、ウクライナ政府は停戦を受け入れるべきだ、という主張の論拠にしていた。ちなみにバンス氏自らは、高卒で従軍して、イラクで勤務した経験がある。

ウクライナ苦戦の原因は、人か、武器か。

この口論の背景には、ロシアが支配地を広げ続けている戦況の責任を、誰が負うか、という責任転嫁の構図がある。

巨額の武器支援を提供しているアメリカは、人員不足が苦戦の原因だと主張する。ウクライナは、アメリカをはじめとする支援国の武器支援が不十分なので苦戦している、と主張している。

戦況分析の議論のように見えるが、それぞれが自己の立場を守り、相手に責任を転嫁しようとしている図式になっていることは一目瞭然である。トランプ氏の当選を受け、バイデン政権が、今までのウクライナ支援の責任の整理を始めている、という言い方もできるだろう。