以前から貸金庫から資産を窃取される事案が発生か

 野村では、2021年に日本国債の先物取引で社員が相場操縦をしたとして、今年10月、金融庁から2176万円の課徴金納付命令を受けた。22年には岡山支店に所属していた社員2人が高齢顧客などから総額約9700万円を騙し取っていたことが発覚しているが、同じく大手金融機関の不祥事として世間を騒がせているのが、三菱UFJ銀行の店頭業務責任者(すでに懲戒解雇)が顧客約60人の貸金庫から計十数億円に上る資産を窃取したという事件だ。この元行員は練馬支店(22年に統合された旧江古田支店を含む)と玉川支店の貸金庫を開けて、顧客の資産を窃取。20年4月~24年10月の約4年半の間に計約十数億円に上る資産を窃取していた。

 この事件を受けて、三菱UFJ銀行以外の銀行でも以前から貸金庫から資産を窃取されるという事案が起きていたのではないかと注目されている。たとえば、放送作家の安達元一氏は2019年にYouTube上に投稿した動画内で、ある銀行の貸金庫に預けていた1000万円が消失したと報告。安達氏は警察や弁護士とも相談し、銀行の幹部が応対してくれることになり、銀行側は行員が盗んだことが確認できたとして安達氏に1000万円と解決金を支払ったという。このほか、過去にはQ&Aサイト上では、貸金庫に預けていた資産が盗まれたため銀行や警察に相談したものの『窃盗は不可能』だとして対応してくれないという相談がしばしばあがっていたことが、改めて注目されている。

 メガバンク行員はいう。

「貸金庫を開けるにはカードキーや暗証番号、金庫の鍵などが必要で、セキュリティーチェックポイントは1つではないので、銀行員ですら、どのような手口で窃取できるのか思いつきません。唯一考えられるとすれば、犯行におよんだ行員がものすごく顧客から信頼されており、すべてを預かって本人になりすまして貸金庫に行って詐取したという方法くらいですが、現実的にはこれも難しいと思います」