それ以外に2つ大きな理由が思いつきます。一つは円安。これでクシュタール社は想定価格よりはるかに安い価格で買収することが可能になります。あるいは交渉次第で価格上乗せ余地があるとも言えます。2つ目はセブンの経営が不振であることあります。同社決算を見ても利益率は下がり続け、さえない展開が続く中、イトーヨーカドー問題がこれから本格化する中で一種の負の遺産整理が続きます。
私はこのブログでセブンのことに何度か触れてきたのですが、基本的に現経営陣は及第点に及ばないと考えています。ずばり申し上げるとセブンは鈴木敏文氏の芸術作品であり、現経営陣は鈴木氏のスタイルと必ずしも意を共にしていないとしても経営方針に斬新感はなく、ただうわべの経営指標に基づき日々機械のような業務を行っている、そんな風にしか見えないのです。もちろん鈴木氏が活躍したコンビニ大成長時代はとうに終わっており、日本国内事業は飽和し、守りの姿勢がずっと続きます。そして事業の7割を占める海外利益は4-6月期には8割減と苦戦します。
ではお前は今回のクシュタール社の買収提案をどう見るか、と言われるとクシュタール社がそんなに簡単にあきらめるはずはないこと、セブンの経営陣はへたっていることから買収に妥当性と正当性は大いにあると思います。ただ、日本の代表的企業が日本人のほとんどが知らないカナダの会社に買収されてよいとも思っていないでしょう。ではホワイトナイトは現れるのか、です。
5兆円レベルの取引になれば日本のM&Aでは最高額になりますが、ありえるとみています。最有力候補は三井物産。というか、ここしか思い浮かばないのです。セブンの物流、流通を陰ながら支援しているのは物産グループです。とはいえ同社単独は厳しいので銀行団とシンジケーションを組み、白馬の騎士で買収提案合戦になれば買収提案額が吊り上がる可能性は大いにあります。私がクシュタール社は円安が理由で提案したと申し上げたのは取引金額は一発では決まらないのです。よって相当の懐を持つという意味で今回の動きは注目すべきでしょう。