そもそも渡邉氏が企業名をチーム名に含めようとしたのは、仮にクラブが赤字となっても親会社からの補填を「宣伝広告費」として経費計上できるメリットがあったからだ。Jリーグバブルに沸いた創立当初は誰しもがバラ色の未来しか想像できていなかったが、渡邉氏は“アフターバブル”を想定していた点で、先見の明があったと認めざるを得ない。

そして実際、1998年、マスコミによるスクープという形でフリューゲルスとマリノスとの合併交渉が発覚する。出資会社のもう一方の佐藤工業が経営不振のためクラブ運営から撤退し、全日空も単独でのクラブ運営を諦め、マリノス側に合併話を持ち掛けた。おおよそ合併が内定してから川淵チェアマンの耳に入り、選手などの現場組はマスコミ報道によって知ったという有り様だった。

Jリーグ 写真:Getty Images

企業と自治体に依存したビジネスモデル

同レポートでは、各クラブのビジネスセンスの無さも指摘しており、放映権料やチケット収入、物販収入など、具体的な数字を挙げ、それに対するチーム人件費の高さを批判している。そしてこう述べているのだ。

「いくつかのクラブは自治体所有の競技場の指定管理者として、自己所有の競技場に近い権利を有している。指定管理者制度は 2003年に自治法が改訂され開始された制度であり、それまでは公の施設の管理主体は出資法人、公共団体、公共的団体に限定されていたものが、法人その他の団体であれば特段の制限は設けられなくなった」

「つまりJクラブの運営会社が自治体の競技場を管理運営することができるようになったのである。そして多くの場合、運営管理を行った結果赤字になった場合は、自治体から指定管理料として赤字補填がされるのである。Jクラブは、本体の事業の赤字補填は責任企業から受け、競技場の赤字補填は自治体から受けるという、夢のような構造によって成り立っている」