ただ、世の中、そんな簡単なものでもありません。かつてソロス氏が英国ポンドを打ち負かしたという武勇伝があります。一民間ファンドが一国の通貨を打ち負かすということすら起こりえるのです。あるいは日本にはミセスワタナベという個人FX投資家で逆張りを好む大きな流れがあります。最近はミセスワタナベが「シニアワタナベ」になり取引量が落ちているともされますが、不特定の民意が為替を動かすことも当然あるのです。

これはFX(先物)という様々な創造力が相場をある程度動かすと言ってもよいでしょう。専門家によっては為替が国力で動くわけがないと言います。しかし国力とは政治的圧力や将来的な経済力を当然含むわけでそれを市場参加者が分析し判断することでレンジを飛び越えて動くことも起こりうるわけです。例えば昨日の韓国の騒動では韓国ウォンが一時急落、円が買われましたが騒動が収まってそちらも一気に元に戻りつつあります。これなどは国情をよく表した動きでした。

ただし、ボラティリティの考え方からすると必ずいつかはレンジ内に収まるわけで為替の場合は株価のような短期ボラティリティ、中期ボラティリティそして極めて長いボラの組み合わせで動くのでシーソーだとも言えます。シーソーは下がっても地面についたらそれ以上下がらないのと同様、ファンダメンタルズが変わらない限りにおいて為替は循環すると考えています。

ドル円の場合、最近では1985年のプラザ合意がファンダメンタルズが変わった最後のイベントだと考えています。それ以降、ドル円の相場は80円から160円のレンジに収まってます。私が考える大枠レンジとはこのことです。そしてつい最近までそのレンジの上限(円安)に張り付いていたのです。私のシーソー的発想からすれば「ここから想定通り、円高にむかうのか」というのが大きな仮説になります。

円高要因としては日銀が12月ないし1月に再利上げする公算が高いという点です。但し、私はこれは既に市場が織り込みつつありむしろ日銀のその先のベクトルが何処にあるか次第だとみています。私は以前から日本の金利水準は1%程度が妥当と申し上げており、日銀や専門家も理想としてはそこをターゲットにしたいとしています。よって日銀がどれだけのモメンタムと意思をもって利上げを継続するかが円高を下支えする要因になります。