そういった観点から考えると、高齢者の困窮を防ぐために重要なのは基礎年金あるいは生活保護であり、厚生年金(比例報酬部分・二階建て部分)はあくまで豊かさである「オマケ」ともいえる。

社会保障審議会の資料によると、基礎年金部分が24.6兆円であるのに対し、報酬比例部分は28.8兆円。「オマケ」のほうが大きいのが現状だ。

もちろん政府は「払った分だけお得」といって厚生年金制度加入を拡大してきた背景があるから、この「オマケ」部分が重要で目減りするのは耐え難いという声は、現役世代からもあがるだろう。

しかし今の年金は賦課方式といって、”いまの高齢者への給付分は今現在の現役世代が支払う”という仕組みになっている。現役世代に支払い側の役割を求めるのであれば、現役世代が不在だった過去に交わされた受給関係について、ちょっと見直してくれないかと声を上げる資格はあるはずだ。

そもそもマクロ経済スライドで基礎年金が目減りすれば、厚生年金加入者の年金も目減りする。どうせ目減りするなら生活困窮者を支えるという本来の目的を尊重したほうが良いのではないか。

一方で重大な懸念がある。最初に示した図では基礎年金を維持するために、厚生年金財源の活用あるいは国庫負担率を上昇させると記載がある。これはすなわち増税もしくはサラリーマン厚生年金保険料の増額を示唆している可能性が高い。

現役世代としてはこれ以上の国民負担増 = あらゆる増税は受け入れがたい。もし年金本来の目的を機能させるために基礎年金部分を確保したいならば”増税に徹底的に反対”し、比例報酬部分(厚生年金における二階建て部分)の目減りを加速して対応すべきだと、私は考える。

それを極限まで推し進めた形が、自民党 河野太郎氏が提唱する最低保障年金だ。

全ての国民は最低保障年金(およそ基礎年金と同義)の給付が保証され、二階建て部分はNISAやiDecoへとその役割を譲る。