最大の理由は尹錫悦大統領の支持率低下と弾劾の可能性。これは朴槿恵氏が弾劾された際、その直前に彼女も非常戒厳の検討をしていたとされ、尹大統領に発想のヒントを与えたとみています。もう少しさかのぼると韓国で4月10日に行われた総選挙で議席数300のうち、「共に民主党」など野党が192議席を確保しており、少数与党による議会運営どころか国会で高官の弾劾を求めるなど紛糾し続け、ほぼ機能しない状態に陥っていることに嫌気がさしたのだとみています。
2つ目に国内経済が極めて深刻な停滞に陥っていることがあります。GDPを見ると2024年の各四半期はそれぞれ1.3%、マイナス0.2%、0.1%成長となっており当初期待されていた年間2.5%程度の成長には全く届かない状況にあります。
経済成長が鈍化している理由はインフレなどさまざまだと思いますが、個人的には韓国独特の2つ根本的理由があるとみています。1つは国民の貧富の差と高齢者の老後問題が重たくなってきていること、2つ目は異様なほどの少子化で長期的に見た国家の維持計画ができず、年金問題などあらゆる制度上の問題が噴出していることがあります。
3つ目は北朝鮮の動きです。金正恩氏が水を得た魚のように元気になった最大の理由はロシアとの関係強化でしょう。
それまで中国は北朝鮮を支配下のような位置づけにし、習近平氏は金正恩氏を小僧扱いにしていました。そこにプーチン氏がビジネスディールを持ってきてくれたことで「自分を対等な立場で扱ってくれた」という喜びと共に一気に勢力を盛り返しました。併せて韓国に対する圧力、敵対視はより強化され、韓国の一般国民を不安に陥れます。韓国内には北との摩擦を避けたい従順派と強硬派があり、野党は従順的であるとされます。それにくさびを打ちたかったのはないかと考えています。
更にもう一つ加えるなら尹大統領と与党「国民の力」の韓東勲代表との関係悪化もありそうです。とにかくこの2人のウマが合わないのです。とすれば現状、韓国は尹大統領の意のなすがままという感じにも見えますが、もちろん、政界や国民が黙っているわけがないのが韓国であります。