しかしその中でも、特に興味深いシャチ一族がいます。
この一族は1990年代から観察が続けられており、当時からエイやオオメジロザメ、そして稀にジンベエザメを含む軟骨魚類を狩る様子が目撃されていました。
そしてメキシコ国立工科大学を中心とする研究チームがこの一族の追跡観察をしたところ、2018年〜2024年にかけて4度にわたるジンベエザメの狩猟行動が確認できたのです。
4回の狩りのうち3回には「モクテスマ(Moctezuma)」と命名されているオスのシャチが参加しており、またモクテスマと行動を共にしているメスのシャチも度々見られたことから、ジンベエザメ狩りをしているのは同じファミリーであると考えられています。
現状、ジンベエザメを狩猟するシャチ集団は他に確認されておらず、この一族が唯一と見られます。
さらに狩猟行動を映像や画像から分析したところ、一族に伝わるジンベエザメ狩りの秘術の全貌が明らかになりました。
一族に伝わる「ジンベエザメ狩り」の秘術のやり方とは?
カリフォルニア湾のシャチ一族が行うジンベエザメ狩りは常に同じ方法が取られていました。
まず、数頭のシャチがジンベエザメを取り囲み、その頭を頭突きやヒレなどで何度か殴りつけ、気絶させて動けなくします。
そしてここがポイントなのですが、気絶したジンベエザメをほぼ必ず「逆さまにひっくり返す」のです。
その理由はおそらく、ジンベエザメのお腹が背中などの他の部位に比べて柔らかく無防備だからだと考えられます。
ジンベエザメの体は他のサメと同様、硬いウロコで守られていますが、白いお腹側がウロコが小さかったり、密度が低くなっています。
そこでシャチ一族はジンベエザメのお腹を露出させて噛みつきやすい姿勢にし、大量出血させます。