マクロン氏が焦っているのはトランプ氏が就任すればウクライナ支援のプラグを引っこ抜くだろう、そうすればウクライナの劣勢はより鮮明になり、NATOへの実質的な影響は更に大きくなるだろうからその前に手を打っておきたいというものです。
もちろん、これはバイデン氏が長距離砲によるロシア向け攻撃を容認したことと重なっています。ただ、プーチン氏は参戦する国には容赦しないという姿勢を明白にしていることから、それこそ第三次世界大戦のリスクが出てしまうわけです。それ以上に欧州がアメリカと敵対的な政策を進めることで欧米の関係が不安定になることがより懸念されるのです。
トランプ氏はNATOにどれだけ興味があるのかといえば「欧州は十分な拠出金を出していないじゃないか?出さないならアメリカは拠出を留保する」ぐらいは平気でやってのけるでしょう。その時、マクロン氏に「いや、まぁ、トランプさん、そう言わずに…」という揉み手の技ができるとは思えないのです。
そのフランスはマクロン氏が昨年暴挙に出た総選挙策が失敗し、国内政治がガタガタになり、ようやくスタートしたバルニエ首相を中心とする政権も崩壊寸前です。10月に示された25年度予算案に対して少数与党が議会承認を得るために野党に譲歩をしたものの極右のルペン氏を満足させられず、左派も同調し、内閣が今日にも採決なしの議会突破をします。それを受け野党は内閣不信任案を提出、可決されるため、フランスは近年まれに見る政治危機に陥るのです。
為替市場を見るとユーロ独歩安になりつつあります。理由はフランス、ドイツが不安定でEUの長期的取り組み、更にはNATOのあり方を含め、読みづらくなっているからでしょう。
ドイツにしてもトランプ関税には戦々恐々としています。アメリカがEUに対しても10%の関税をかければ輸出大国ドイツが無傷ではいられないというものです。そもそもシュルツ政権がほぼ崩壊し、国内のリーダーシップもない中、ドイツ経済はこの2年間ほぼフラット、つまり成長していないのであります。