戦後は日本も核家族になったので、直系家族で個人を同定する戸籍制度は形骸化したが、企業にも「一家」で働く意識が強く、親会社と子会社の多重下請け構造で、市場を介さないで緻密なすり合わせを行う。
それが日本の製造業の競争力の源泉だが、1990年代以降のグローバル化には、ローカルな「家」の中で調整するシステムは適応できない。この点では多くの家族が地域を超えて大きな宗族でまとまる中国のほうが、グローバル化に対応しやすい。
「家」の意思決定は中間集団の中で行われ、それを超える権力が弱いので、細かいことも全員一致しないと決まらない。夫婦別姓のような当たり前の法改正に30年近くかかる自民党は、「家」社会の欠陥をよく示している。
このような家父長制を卒業し、個人が中間集団から自立することが日本の課題だが、それは容易ではない。選択的夫婦別姓が戸籍を見直すきっかけになり、明治以来の家父長制を脱却できるなら、夫婦別姓をめぐる議論も無駄ではない。