たとえば、通勤途中に聞いたポップソングが一日中頭から離れなかったり、友人との会話の中で出てきたフレーズが昔好きだった曲を思い出させたりします。

このように、イヤーワームは日常の中の小さなきっかけで引き起こされます。

音楽教育を受けている人や音楽に親しんでいる人は、イヤーワームを経験する頻度が高い傾向があります。

しかし、音楽教育を受けていない人でもイヤーワームは起こります。性格特性も影響し、創造性が高い人や感受性豊かな人はイヤーワームを感じやすいと言われています。

それは、音楽が感情や記憶と深く結びついているからかもしれません。

イヤーワームが発生する脳内メカニズム

イヤーワームは、脳内の複数の領域が関与する複雑な現象です。特に、音楽を処理する聴覚皮質や、記憶を司る海馬、そして注意や計画を担当する前頭前皮質が活発に働いています。

興味深いのは、この現象がデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる意識的な努力を必要としない無意識的なプロセスが関与しているという点です。

DMNは私たちが休息しているときや何もしていないときに活性化し、内省や記憶、想像力に関与します。つまり、イヤーワームが起こるのは、脳が無意識のうちに高度な情報処理を行っている証拠なのです。

イヤーワームの謎は脳科学の進歩により徐々に明らかになってきました
イヤーワームの謎は脳科学の進歩により徐々に明らかになってきました / Credit:Canva . 川勝康弘

またイヤーワームが発生する背景には、私たちの脳の認知プロセスが深く関わっています。

特に注目すべきはワーキングメモリの役割です。

ワーキングメモリとは、情報を一時的に保持し、操作するための脳のシステムのことです。

この容量が大きい人ほど、イヤーワームをコントロールしやすいと言われています。

もしあなたが、イヤーワームの開始や終了をある程度コントロールできると感じているなら、それはあなたのワーキングメモリが高い能力を持っている証拠かもしれません。