キーウで昨年、13店の新たな書店がオープンしたという情報はウクライナの代表的作家アンドレイ・クルコフ氏がウィーン訪問時、インタビューの中で語ったものだ。同氏は戦争の日々、文学の重要性を指摘し、困難な時代における読書への愛について語っている。
ちなみに、クルコフ氏(63)はウクライナでロシア語を話す少数派に属し、現在もキーウに住んでいる。ロシアによるウクライナ侵攻以降、彼は自由なウクライナを目指す文学的な大使として活動し、現在の著作や講演では非常事態下の日常について語っている。ウクライナにおけるロシア語作家の一人で、ポストソビエト時代の社会をユーモアとシニカルな視点で描き、国際的な評価を得ている。
FM4ラジオとのインタビューの中で「この3年間、小説を書くことができなかったが、ここにきて再び散文などを書き出している」という。クルコフ氏の代表作品で国際的にもベストセラーとなった『ペンギンの憂鬱』の物語は1990年代、ソビエト連邦崩壊後の世界を舞台にしている。「その時代は経済的にも治安的にも非常に危険で、困難な時期だった。当時、ユーモアは非常に重要な役割を果たした。まるで薬のようなものだった。そして今日、状況はさらに悪化している。多くの人の気分が沈み、鬱状態にある。私は、そうした人々にとってユーモアが現代の困難を乗り越える助けになるべきだと信じている」という。
文学があなたや周囲の人々にどのように役立っていると感じるか、という質問に対し、クルコフ氏は「私自身にとって確実に役立っている。人々は小説を読むことが稀になったが、その代わりにウクライナの歴史や戦争、文化についてのドキュメンタリーや専門書を多く読んできた。また、詩も非常に重要な役割を果たしている。詩はすぐに朗読できたり、誰かに聞いてもらったりできる。詩は新しい感情的なエネルギーや、前向きなモチベーション、考えを提供してくれる。文学は現在のキーウで非常に重要な役割を果たしている。これが昨年キーウで13もの新しい書店が開店した理由だと思う」と説明している。