モドリッチが子供の頃にサッカーを覚えた場所は、クロアチアが紛争中に身を寄せていた避難先にあった駐車場だという。つまりストリートサッカーだ。
モドリッチは右足アウトサイドを巧みに使う。アウトサイドを多用するプレーは、バルカン半島や南米のようなアウトローで技術力が高い国の出身選手に多い傾向がある。モドリッチが生まれた旧ユーゴスラビアは「(東)ヨーロッパのブラジル」と形容され、よく比較される。
小さな頃から手取り足取り正しい基礎技術を教わっていると、このような選手は出てこない。ノーモーションでデタラメな方向にキックすると精度が落ちる傾向があり、育成段階でキックのフォームを矯正される。しかし、モドリッチは奇跡的にピタリと狙ったところに届く。型を崩したキックながら、摩訶不思議なことに精度がピカイチなのである。
無論、小さな頃から正しい基礎技術を教わっている日本人に、このパスを使いこなす選手は少ない。
プレーを変えた武者修行時代
力技で相手を封殺する訳ではないが、タフでボールへの執着心が尋常ではなく、気がつくともうボールを奪っている。この泥臭い特徴は、若い頃のモドリッチにはまだなかった。
きっかけとなったのは、ディナモ・ザグレブのユースからトップチームに昇格して間もない2003/04シーズンのズリニスキ・モスタル(ボスニア・ヘルツェゴビナ)への期限付き移籍だ。
あまり馴染みがない欧州の片隅の国と思うかもしれないが、実は日本の身近なところにある。同国出身者イビチャ・オシム監督(2006-2007)とヴァイッド・ハリルホジッチ監督(2015-2018)という2人が歴代の日本代表監督に名を連ねている。
オシム監督は「走るサッカー」が特徴。そしてハリルホジッチ監督の代名詞といえば「デュエル(1対1の決闘)」だ。彼らは、しっかりと故郷の系譜を継いでいる。