『反証「統一教会」』のエピローグでは、若き日の櫻井氏が北海道大学に入学してすぐ統一原理に出会い、教会の学生部や原理研究会に出入りしていた事実が発掘されている。
櫻井氏は中立的な宗教学者と目されてきたが、ある時期から反統一教会の姿勢に転じ、洗脳をめぐる立場も変えた。これを魚谷氏は、統一教会に甘すぎるという「バッシングに対する恐怖心とトラウマに起因するものであると思われる」と指摘し、「自分が学生時代に統一教会と出会い、教会の学生部や、その友好団体・原理研究会に出入りしていたという事実を公表することなく、客観的な第三者であるかのようにふるまって研究活動を続けてき、統一教会に関する数多くの論文や書籍を発表してきた」と批判する。「不実表示」に当たるというのだ。
ここに至り『反証「統一教会」』は旧統一教会問題についての反証としてだけでなく、櫻井氏に限らぬ日本の人文系アカデミアに警鐘を鳴らす書籍となっている。なぜなら旧統一教会の立場を有利にしようとするポジショントークで埋め尽くされた著述ではなく、エビデンスを重視した客観的な姿勢が全篇に貫かれているからだ。
編集部より:この記事は加藤文宏氏のnote 2024年11月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は加藤文宏氏のnoteをご覧ください。