つまりマグロはサメにとって大きすぎる獲物なのです。
その証拠にカツオなどサメの体長の22%程度のサイズしかない魚は、サメへの擦りつけ行動があまり見られなかったといいます。
また「擦りつけ行動」は9割成功するものの、残りの1割程度は失敗に終わることも分かりました。
泳いでいるサメに体を擦りつける以上、タイミングがずれる場合もあるのでしょう。
その他に魚たちが、自分の体のどの部位をサメに擦りつけるか、という点にも特徴がありました。
すべての魚類で成功した93回の擦りつけのうち、魚たちは頭部や胸ビレを擦りつける割合が大きく、背ビレや尾ビレを擦りつける割合は小さかったのです。
この擦りつけの割合が大きい部位は、目や鼻孔、エラ、側線(魚が水圧や水流の変化を感じるための器官)など、寄生虫による影響が大きい場所でもあります。
このことは、擦りつけ行動が「寄生虫を除去するためである」という科学者たちの推測を支持するものとなりました。
さらに魚類によってサメの扱い方にも違いがあると分かりました。
マグロは整然とサメの後ろに並び、順番を守って、1匹ずつ丁寧に自分の体をサメの尾ビレに擦りつける傾向がありました。
一方、ブリに似た大型魚「ツムブリ(学名:Elagatis bipinnulata)」は、サメの後ろで群れをつくり、どんどん飛び出してはさまざまな角度からサメにぶつかっていく、というかなり乱暴な手法をとっていたのです。