そこで海の捕食者であるサメを、まるで「垢すりに使う軽石」や「掃除道具のタワシ」のように利用しているのです。
仲間同士で擦り合えば良いようにも感じますが、同種で身体を擦り合うと、寄生虫を除去するよりも相手に移したり移されたりするリスクが高くなります。
また通常、魚の表面はツルツルしているため、鮫肌ほど異物除去に最適ではなく、サイズもサメの表面はちょうどいいという理由があるようです。
そのため、サメによる捕食リスクと寄生虫リスクを比較した場合、サメを利用して寄生虫を取り除くメリットの方が勝ることになるのでしょう。
とはいえサメが危険な捕食者であることに違いはなく、また遠洋の出来事であるため、これらの行動はあまり詳しく検証できていません。
そこで研究チームは「擦りつけ行動」に対する理解を深めるため、2012~2019年の間に世界中の36カ所で取得された数千時間にも及ぶ海中カメラの動画を分析することにしました。
その結果、魚の種類によって「サメの扱い方」にいくらか違いがあることを発見するのです。
マグロたちは「規則正しく順番を守って」サメに体を擦りつける
研究チームがすべての動画を分析した結果、マグロなどの大きな魚は小さい魚に比べて、体をサメに擦りつけることが多いと判明しました。
公開された映像では、巨大なマグロがサメの後ろから近づき、体を擦りつけてから去っていく様子が確認できます。
「マグロがサメに近づいて食べられないの?」と疑問に思った人もいるでしょうが、調査ではむしろマグロのような大きな魚の方がサメを積極的に利用していたようです。
その理由について研究者たちは、サメの捕食対象となる魚のサイズが自身の体長の36%以下であることがほとんどである点を指摘しています。