当時、共和党のブッシュ大統領に反発する民主党は、ビル・クリントンによって徐々に良くなってきていたアメリカの財政赤字を膨大に膨らませたのは、ブッシュ大統領であるとして、中東介入には反発していたが、911テロ事件はその声が霞むほどにアメリカ国内世論を後押しして中東介入を進めさせた。
911ほどの事件を、中東のテロ組織が行えるのか?と言う疑問を投げかけてきた人々は、やはり911テロ事件の背景に、何らかの国家権力の介入があったのでは無いか?と言う疑念が付き纏っていた。そして、公開された『Loose Change』は、戦略的にもインターネット上で小さく公開すると言う手法で成功したと言える。つまり、大々的な広告を打つのではなく、作りの良いドキュメンタリーの手法で、ネット上の有志によって手作りで情報をかき集めつなぎ合わせた結果、その状況証拠と共に明らかに当時のブッシュ政権の背後にいた何らかの力が働いたと結論つけている。
このドキュメンタリー制作の手法は、実に巧妙に練られたストーリーで、ブッシュ大統領や共和党を直接名指して批判はしていない。あくまで、状況証拠の羅列によって、人々に陰謀論と明確に示さない形で陰謀があったのでは無いか?と印象つけている。
だからこそ、911テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンが暗殺され、一応の決着を見た現在でも、この映画の中身を本気で信じる人が、いまだに後を経たないし、2004年に公開されたファーストエディション以後、3回にわたって再編集が行われ、公開され続けている。
更にこの映画、ファーストディションは無料公開されたことも、人気を博した背景だ。これだけの取材、資料分析を行い、更に無料公開したことで、ネット上の有志が無償でやったからこそ、商業主義ではない真実のドキュメンタリーだと受け入れられたのだろう。
ただ、ファーストエディション公開後は、有料による配布となり、一気にその熱が冷めたのも事実で、根強いファン以外、既に忘れ去られた映画となりつつある。商業的に成功したとは必ずしも言えず、影響は与えたが、パッとした成果は生んでいないというのが現実だ。