事件の裏で起こった「仲間割れ」
実はこの頃、Nutsの経営陣で仲間割れが生じていた。元々、森田氏をNuts社長に送り込んだのは、筆頭株主の長谷川隆志氏である。長谷川氏はNutsの実質オーナーであり、取締役や、会計監査人の監査法人元和代表だった星山和彦氏などNuts関係者を呼び「定例会」を開催しており、経営状況について逐一報告を受ける立場であった。
だが、森田氏の供述調書では、19年の暮れごろから、金融ブローカーらと長谷川氏を排除する計画を進めていたという。対して長谷川氏は20年7月、森田氏に取締役からの解任を言い渡す等、関係が悪化していた。その最中に、監視委員会による強制調査が入り、調査委員会が立ち上げられたのだ。
森田氏の立場からすると、都合の悪い内容の報告書が出れば、刑事事件で立件されるだけでなく、長谷川氏との内紛で不利になる恐れがあった。だがその結果、Nutsの株主は上場廃止により甚大な被害に遭うことになる。
調査報告書の最終版は20年9月16日に完成していたが、森田氏の破産申立により、同日に上場廃止が決定。しかし結局のところ、Nutsは9月末に調査報告書を開示し、粉飾工作は明るみになった。そして前述の通り、21年6月、長谷川氏、森田氏、金融ブローカーらは逮捕され、同年12月、長谷川氏に懲役2年2カ月(執行猶予3年)、森田氏らに懲役2年(執行猶予3年)の有罪判決が下りた(すでに確定)。
一方、Nutsの不正行為に深く関与しながら、検挙を免れた関係者もいる。その一人が、会計監査人である監査法人元和代表の公認会計士・星山和彦氏だ。
星山氏は前述の通り、Nutsの経営幹部が集う「定例会」に参加していた。調査報告書などによると、星山氏は、虚偽開示と認定された会員制医療施設に関する適時開示の公表を、森田氏に代わって長谷川氏に説明するなど、森田氏と一体となってNutsの運営に関与していたようだ。
星山氏とNuts経営陣は癒着とも言える関係性を築いていた。16年12月に、森田氏がラスベガスのカジノで5000万円を擦り、Nutsから負け代金を補填したという事案がある。このラスベガス旅行は、プライベートジェットをチャーターする豪華絢爛たるものだったが、星山氏はこの旅行に動向していた。こうしたNutsの状況を早い段階から把握していたにも関わらず、会計監査人として監査報告書や内部統制報告書にサインをし続けた。Nuts事件後、監査法人元和は解散している。
また、Nutsの「定例会」メンバーで、粉飾決算の資金を用立てるなどしたにも関わらず、星山氏と同じく検挙を免れたのが、石村満氏という人物だ。元HSBC常務、元大蔵官僚の滝本豊水氏(西村あさひ法律事務所)を代表に据えたNPO法人証券学習協会の専務理事といった経歴を持つ金融の専門家でもある。
石村氏は19年4月頃、長谷川氏の仲介でパチンコ・パチスロ業界に影響力を持つと言われる安藤英雄氏から3億円の提供を受け、そのうち2億6400万円を妻名義の会社からNutsに入金し、Nutsはこれを売上として計上していたという。
石村氏はNuts事件がはじける直前に、東証スタンダードの上場しているCLホールディングスの取締役に就任している。
一方、森田氏と長谷川氏の紛争は現在も続いている。長谷川氏は20年に、森田氏に対して提供した貸付金など6億2900万円の返済を求めて提訴し、いったんは今年5月に森田氏が全額の支払い義務を認めることで和解した。だが関係者によると、この裁判上の和解は破棄され、紛争の終結の目処はたっていないという。
(文=Business Journai編集部)
提供元・Business Journal
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