1. イタリアの労働生産性 要因分解

    最後がイタリアです。

    図6 労働時間あたりGDP 要因分解 イタリアOECD統計データより

    図6がイタリアの労働時間あたりGDPの要因分解結果です。

    イギリスよりも更に1970年代~1980年代初頭の名目成長率が高い状態が続いていたようです。 物価もその分大きく上昇していますね。年率15~20%程度の水準が10年ほど続いていた事になります。

    名目成長率は徐々に低下していき、リーマンショック近辺では2~3%程度ですね。

    実質成長率はマイナスになる事も多く、2002年ころからゼロ近辺で推移しています。

  2. 成長率の比較

    折角ですので、各国の労働時間あたりGDPの成長率も比較してみましょう。

    やや見難いグラフとなりますがご容赦ください。

    図7 労働時間あたりGDP 名目 成長率OECD統計データより

    図7が各国の労働時間あたりGDPの名目成長率を重ね合わせたグラフです。

    各国で徐々に成長率が低下している様子が良くわかりますね。

    1970年代の日本(青)の成長率は確かに高かったようですが、イギリスやイタリアの方が高成長が長く続いていた事がわかります。

    日本は1970年代後半から急激に成長率が低下し、1980年代~1990年代半ばころまではドイツやアメリカと同程度で推移しています。

    2000年あたりからゼロ近辺で推移するようになり、主要先進国のなかではかなり低い水準が続いている事が確認できます。

    図8 労働時間あたりGDP 実質 成長率OECD統計データより

    図8が労働時間あたりGDPの実質成長率です。

    実質成長率でもやはり傾向的には低下している事が確認できます。

    日本(青)は1990年までは主要先進国の中でもやや高めの水準で推移しています。バブル崩壊後も他国と相応の水準で推移していて、特段低い水準ではないようです。

    実質=数量的な生産性は他国並みに成長している事がわかりますね。

    ただし、名目の成長率が低いので、それが価格に反映されていないという事になると思います。

  3. 労働生産性の成長率の特徴

    今回は、G7各国の労働時間あたりGDPについての要因分解結果をご紹介しました。

    各国で共通しているのは、名目成長率が1970年代~1980年代で大きく、その後徐々に低下しているという事です。

    実質成長率も年率5%前後から徐々に低下し、リーマンショックあたりからせいぜい0~2%成長の国が多いようですね。

    主要先進国の生産性の伸びが大きく低下している様子が見て取れたと思います。

    一方で、GDPが増え、物価が上昇している傾向なのは日本以外の国では共通ですね。

    日本は1999年~2013年で物価が下落し、名目成長よりも実質成長の方が高い期間がありました。いわゆるデフレ型の経済成長といった状況だったわけですが、2014年あたりからはGDPが増加し、物価が上昇するという状況になっているようです。

    要因分解をしてみると、それぞれの構成要素がどのように寄与しているのかが良くわかりますね。

    図9 労働時間あたりGDP 実質 購買力平価換算OECD統計データより

    一方で、前年からの成長率は各国での変化の度合いを見比べているに過ぎません。

    経済的に大きく劣後している国であれば他国よりも成長率が高くないとキャッチアップできませんし、もともと経済水準の高い国であれば成長率が低くなるのも当然です。

    日本の労働生産性は、他の主要先進国と比較すればかなり低い水準である事も指摘されていますね。他国と同程度の成長率では、その差はなかなか縮まらないという事は図9を見ると良くわかります。

    皆さんはどのように考えますか?

    編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年2月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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