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  1. 要因分解とは

    前回は労働生産性の指標である労働者1人あたりGDPについてご紹介しました。

    日本は生産性が低いと言われますが、労働時間あたりGDPでも労働者1人あたりGDPでもその傾向が確認できました。

    今回は、労働時間あたりGDPの実質成長率についての要因分解結果を共有いたします。各国の成長の特徴が良くわかり大変興味深いと思います。

    要因分解は、ある経済指標がその構成要素の掛け算や割り算で計算されるときに、前年からの成長率は構成要素の成長率の寄与度として足し算や引き算として表現できるというものです。

    今回の労働生産性の計算式は以下の通りとなります。

    労働時間あたりGDP 実質 = GDP ÷ 労働者数 ÷ 平均労働時間 ÷ GDPデフレータ

    労働時間あたりGDP 実質成長率 = GDP成長率 – 労働者数成長率 – 平均労働時間成長率 – GDPデフレータ成長率

    ここで、成長率は、次のような計算式となります。

    成長率 =(当該年の数値 – 前年の数値)÷ 前年の数値 x 100

  2. 日本の労働生産性 成長率

    まずは、日本の労働時間あたりGDPについての実質成長率を見てみましょう。

    図1 労働時間あたりGDP 要因分解 日本OECD統計データより

    図1が日本の労働時間あたりGDPについて要因分解した結果です。

    GDP(青)は増えればプラス寄与、労働者数(赤)、平均労働時間(緑)は増えるとマイナス寄与、GDPデフレータ(物価指数、黄)は上昇するとマイナス寄与です。

    正味の労働時間あたりGDPの名目成長率は黒の折れ線、実質成長率は赤の折れ線で表現しています。

    日本は1970年代、とりわけ1973年と1974年の成長率が極めて高い高度経済成長の時期がわかりますね。

    GDPの成長が大きく、物価も上昇した時期となります。名目成長率は年率20%を超えていたというのは驚きです。

    実質成長率も1990年頃までは年率5%前後で安定していますが、バブル崩壊後は減少し、ゼロ近くで推移しています。

    構成要素の寄与度を見ると、1999~2013年まではGDPデフレータ(橙)がプラス寄与していますね。この時期は物価が下がり、その分実質成長率が嵩上げされています。

    平均労働時間(緑)はほぼ一貫してプラス寄与ですので、短くなり続けている様子がわかります。これは、比較的労働時間の短い女性や高齢労働者が増えたり、残業が減ったり、パートタイム労働者増加の影響などが考えられそうです。

    労働者数(赤)は1990年代初頭までは一貫してマイナス寄与なので、増え続けていたわけですが、その後は増えたり減ったりしているようです。

    2009年のリーマンショック、2020年のコロナ禍では、GDPが減少し、平均労働時間が極端に短くなるという傾向が確認できますね。

    バブル崩壊を機に日本の経済の形が大きく変わったことが良くわかります。

  3. ドイツの労働生産性 成長率

    続いてドイツの要因分解結果を見てみましょう。

    図2 労働時間あたりGDP 要因分解 ドイツOECD統計データより

    図2がドイツの労働時間あたりGDPの要因分解結果です。

    日本と比べると極端なアップダウンが無く、安定した印象がありますね。

    1970年代の名目成長率は10%前後、実質成長率は5%弱といった感じです。その後は少しずつ低下傾向となり、名目で2~3%、実質で1~2%といった推移のようです。

    GDPは基本的に一貫してプラス成長、物価も上昇が続いています。労働者もマイナス寄与が多いので基本的には増えている状況です。平均労働時間もほとんどがプラス寄与なので、傾向的には徐々に短くなっている様子です。

    日本と異なるのはリーマンショック期を除けば、名目でも実質でも安定した推移のように見えます。

    2012年以降の実質成長率はかなり低い水準ですが、プラスを維持しています。