一例を挙げると、糖尿病やがん、高血圧や動脈硬化などの心血管疾患、関節リウマチや炎症性腸疾患を含む自己免疫疾患、他にも咳や皮膚のかゆみ、腹痛、下痢の増加があります。
そのため、体内炎症を緩和することは非常に重要なのです。
一方これまでの研究で、一時的な身体ストレスへの曝露(例えば、低温刺激を受けるなど)が体内炎症を有意に緩和しうることが示唆されてきました。
これは突発的なストレス刺激が体内のアドレナリン作動系を活性化し、種の生存に欠かせない「闘争・逃走反応(fight-or-flight response)」を引き起こしてくれるからです。
闘争・逃走反応は、危機的状況に陥ったときに戦うか逃げるかを選択する反応であり、恐怖体験を生き延びる上でヒトを含む多くの動物に備わりました。
そして闘争・逃走反応は、抗炎症作用を持つ「コルチゾール」というホルモンの分泌を促し、これが体内炎症の緩和に繋がっていると考えられています。
つまり逆説的ではありますが、ストレスは一時的で短いものであれば、健康に逆にいい可能性があるのです。
しかし他方で、心理的なストレス刺激とされる「恐怖体験」が同じように体内炎症を緩和させるかどうかは不明でした。
この謎を解き明かすべく、研究チームは被験者をおばけ屋敷に入れる実験を試みました。
おばけ屋敷で体内炎症が減った!
今回の調査では、デンマークの都市ヴァイレに在住の113名の一般成人(女性69名、男性44名、平均年齢29.7歳)を対象としました。
実験は2023年の9月〜11月にかけて実施され、被験者にはヴァイレにあるおばけ屋敷を体験してもらい、その間の心拍数をモニタリング。
アトラクションを終えると、主観的に感じた恐怖レベルを1〜9段階で評価してもらいます。