ほどよい恐怖を感じることが心理面にプラスの健康効果を与えることはよく知られています。

しかしほどよい恐怖体験は心だけでなく、体にも健康作用を及ぼすようです。

このほど、デンマーク・オーフス大学(Aarhus University)の最新研究で、おばけ屋敷を訪れた被験者は実験前に比べて、体内の炎症レベルが有意に減少していることが明らかになりました。

体内炎症が慢性化すると、高血圧や動脈硬化、がん、糖尿病の発症リスクが高まってしまいます。

娯楽としての恐怖体験はさまざまな疾患を予防する方法となるかもしれません。

研究の詳細は2024年11月13日付で医学雑誌『Brain, Behavior, and Immunity』に掲載されています。

 

目次

  • 一時的なストレスで逆に炎症は緩和する?
  • おばけ屋敷で体内炎症が減った!

一時的なストレスで逆に炎症は緩和する?

私たちの体には、異物が体内に入ってきたり、細胞が異常を起こすと、それを排除して体を守ろうとする免疫システムが備わっています。

例えば、ウイルスが体に侵入して免疫システムを刺激すると、白血球などの免疫細胞が出動し、ウイルスを退治しようとします。

その戦いの中で体内が部分的に赤くなったり、腫れたり、熱を持ったりします。

こうした免疫システムの防御反応の一つとして生じるのが「体内炎症」です。

体内炎症は誰の体でも起こっていますし、しばらくすれば自然に治りますが、体内炎症が慢性化する場合があります。

例えば、ウイルスに度々感染していたり、心理的ストレスの多い職場や有害物質の多い環境で生活していたり、肥満や運動不足、喫煙、睡眠不足、暴飲暴食などで生活習慣の質が低下すると、体内炎症が続いて慢性化しやすくなります。

炎症の慢性化は体を傷つける活性酸素を除去しきれなくなった「錆び体質」に例えられ、あらゆる病気に罹りやすい状態にあるのです。