一つの大きな新しい仕組みは、2023年12 月21日に国連安全保障理事会が採択した決議2719で定められた内容である。この決議では、国連拠出金を、地域組織のミッションの予算に対して、75%を上限として、提供することができると定められた。誰もがこの措置の最初の適用例はソマリアになる、と考えている。ただしまだ公式には決定されていない。

国連PKOは急速な縮小の時代に入っており、過去10年弱で、その予算は3割以上減った。ミッション数も人員数も激減している。それを考えれば、AUミッションの予算の75%までの提供は、歴史的に大きな負担を国連加盟国に強いる、とまでは言えない。ただし非常に新しい試みであり、予算執行のルールに国連基準とAU基準が併存する点などを考えても、実験的な要素は多々ある。

しかも多くの人々がほぼ既定路線と考えた決議2719のソマリアへの適用について、有力な反対国が存在している。アメリカ合衆国である。アメリカは国連分担金の最大負担国として、予算措置の決定には重大な関心を持つ。AUミッションに国連分担金を用いる初事例だということになれば、アメリカがかなり警戒的な態度をとることは、想定の範囲内ではある。

だがさらに事情を複雑にしているのが、議会の動きだ。アメリカでは、大統領に国連に懐疑的なトランプ氏が就任することが決まっただけではない。上院・下院ともに一般に国連に懐疑的な姿勢が強い共和党が多数派となった。これによって、議会の動きの予測が、さらにいっそう厳しいものになった。現時点において、決議2719に基づくAUSSOMへの国連分担金の提供はまだ決定されておらず、関係各国の外交交渉による折衝に委ねられている。

1993年にソマリアで多数の殉職者を出した「ブラックホーク・ダウン」の歴史を持つアメリカは、ソマリアには大々的には関わっていない。ただしアルシャバブ掃討作戦に使われているドローンなどを、アメリカ人の軍事顧問らが動かしていることは、周知の事実である。