ソマリア連邦政府の実力は、現在もなお、自らを維持し続けるには、十分なものになっているとは言えない。
2006年にアルシャバブの前身であるイスラム法廷連合を首都モガデシュから追い払ったのは、隣国エチオピアによる軍事介入であった。現在でもATMIS構成軍事部隊の主力はエチオピア軍である。その他の兵力提供国は、ケニア、ウガンダ、ジブチ、ブルンジであり、近隣諸国の軍隊が、ソマリア連邦政府をアルシャバブの脅威から守り、その存在を支えている形となっている。
ソマリアでは国連は側面支援の役割に徹しており、政治調整を支援する組織として2012年からUNSOM(UN Assistance Mission in Somalia:国連ソマリア支援ミッション)が、そしてロジスティクス面での支援組織として2015年からUNSOS (UN Support Office in Somalia:国連ソマリア・支援事務所)が活動してきた。
ATMISからAUSSOMに移行するのにあわせて、UNSOMは、今月2024年11月からUNTMIS(UN Transitional Assistance Mission in Somalia)となり、あと2年で活動を終了させる予定である。
ソマリアではAUSSOMなどに財政支援をしているEUの存在感もそれなりに大きく、多様な組織が分業体制をとりながら活動する「パートナーシップ国際平和活動」の最先端の一例となっている。
だが長期に渡るAUミッションによってアフリカ諸国にかかっている負担は大きい。すでにアルシャバブとの戦闘で数千人の戦死者が出ていると考えられている(AMISOM/ATMISの殉職者数は公式には発表されていない)。加えて一時期は2万人を擁し、現在でも1万2千人の規模を誇る兵力を維持する財政負担も大きい。
ソマリア連邦政府への権限移譲の大きな流れの中で、しかしAUミッションの完全撤退はアルシャバブの勢力拡大を意味する(アフガニスタンのタリバンのように首都を奪取する可能性も高い)と考えられており、現在のATMISの活動終了時期と定められた2024年12月末をにらんで、様々な外交折衝が行われた。