が、筆者にはスミスやチュトカンや『Politico』、延いてはバイデン司法省の姿勢は単なる強がりに見える。なぜなら、機密文書事件ではトランプが、辞退したマット・ゲーツに代えて即座に司法長官に指名した現フロリダ州司法長官のパム・ボンディが2人に対する控訴を取り下げるか、さもなくばトランプが恩赦を与えるからだ。加えて、連邦時効法により5年で時効が成立するという事情もある。
従って「J6」についても、29年1月の2期目の終わりに82歳になっているトランプを、8年前の事件で訴訟することを時の司法省が検討するなどおよそ考えにくい。更に、共和党員でありながらハリスのキャンペーンに加わったリズ・チェイニーが主導した「J6」下院特別委員会の欺瞞性が、進行中の下院監視小委員会で暴かれる可能性が高い。事件の逮捕者もトランプが公言している通り、その大半が恩赦されるだろう。
トランプは早速、前述のチュトカン判事の指摘もものかは、トゥルース・ソーシャルに「これらの事件は私が経験させられた(forced to go through)他のすべての事件と同様に空虚で無法なもの(empty and lawless)であり、決して起こされるべきではなかった」と書き込んだ。
これら連邦訴訟案件と異なり、州レベルの2件の刑事訴追ではトランプの恩赦権限が及ばない。が、これら2件の見通しも検察にとって決して明るくはない。5月に口止め料を訴訟費用でなく選挙費用と見做した陪審員が有罪判決を出したニューヨーク州裁判では、マーチャン判事による量刑言い渡しが無期限延期となっている。
ニューヨーク地区検事アルビン・ブラッグは11月19日、マーチャン判事宛の書簡で延期を求めたが、これはトランプ側の控訴が量刑言い渡しの後でないと出来ないことを見越したものだろう。が、現職大統領を入獄させられないとすれば、5年の時効が来てしまうから、こうした姑息な奸計がいつまでも続けられる訳ではない。