「枕を高くして寝る」の由来
ここからは「枕を高くして寝る」の由来を解説します。
「枕を高くして寝る」にまつわる故事
「枕を高くして寝る」は『史記』が由来とされています。
中国の戦国時代、遊説家の張儀が魏の王様に秦との同盟を結ぶよう進言した際「楚漢の患い無くんば、則ち大王枕を高くして臥し、国必ず憂い無からん」と説得したという記録が残っています。
この言葉には「敵から攻撃される不安がなければ、大王は枕を高くして眠ることができ、国の心配事も無くなるでしょう」という意味があります。
当時は戦国時代ということもあり、いつ敵が襲ってくるかわからない時代でもありました。
そのため、兵士は襲来に備えて地面に耳をつけたまま寝たり、遠くの音が聞こえるようエビラ(矢を入れる武具)を枕として寝たりしていました。
しかし、同盟を組んで敵襲を受けることがなくなれば、敵からの強襲に怯えながら眠りにつく必要はありません。
同盟を結んで戦争が集結すれば安心して高くした枕で寝ることができます。
そこから安眠できることを意味する言葉として「枕を高くして寝る」が広まったとされています。
つまり、枕を高くするのは「姿勢が正しくなって眠りやすくなる」わけではなく「敵の足音や地響きに怯えずに済む」という意味があるわけです。
張儀の逸話「吾が舌を視よ」
張儀には「吾が舌を視よ」という逸話が残っています。
古代中国の戦国時代に活躍した遊説家の張儀は、ある日「楚の宰相の貴重な玉」を盗んだと疑われ、屈辱・侮辱を受けてしまいます。
それを受け、張儀の妻は「あなたが学問をして遊説などなさらなかったら、こんな辱めを受けることはなかったでしょう」と嘆いたのだとか。
しかし、それに対して張儀は「舌がなくなってしまったら成功の見込みはない。私の舌はまだあるか?」と妻に尋ねました。
そうすると妻は笑いながら「ええ、ちゃんとありますよ」と答えました。
その後、張儀は「それなら大丈夫だ。舌さえあれば主義・主張を説いて回れる分、成功の見込みもある」と語ったとされています。
この逸話は遊説家の張儀らしいエピソードとして知られています。