■数学のプロに見解を聞くと…
前出のような背景があり、そもそも小学校の算数の宿題(テスト)にゼロ除算が登場すること自体、おかしな話。しかし、反対に「数字を0で割ったらどうなるの?」という疑問を自ら教員にぶつける、好奇心旺盛な児童も少なくないだろう。
そこで続いては、数多くの生徒たちを合格に導いてきた『あすなろ学院』数学科・森山昇平氏に、「18÷0」の考え方を解説してもらうことに。
森山氏はまず、「私たちが普段行っている計算というのは『結果がいつでも1つに決まるからできる』というルールがあります」と説明する。
これは、例えば100円の飴󠄀と250円のグミを1つずつ買えば『100円+250円=350円』という数式が必要となり、言うなればいつでも「100+250=350」が成り立つため、支払う金額も1つ(350円)に決まるワケだ。
こちらの法則に注目し、森山氏は「逆に言えば『結果がいつでも1つに決まらない計算はできない』ということになります」と強調する。この性質と割り算の特徴を理解するには、割り算は「かけ算の逆の計算」であることを理解する必要があるのだ。
例えば、式「●÷0=□」は式「□×0=●」と同じ意味になる。このかけ算の左辺「□×0」に、様々な数を当てはめて計算してみよう。
□に1を当てはめると「1×0=0」、□に2を当てはめると「2×0=0」、□に4/3を当てはめると「4/3×0=0」、□に0.567を当てはめると「0.567×0=0」といったように、□に当てはまるのがどのような数だとしても、「□×0」は必ず0になる。
では、これらの式を「同じ意味の割り算」に変換すると、どうなるだろうか?
前出の法則の通り変換すると、かけ算「□×0=0」は、割り算「0÷0=□」となる。こちらに先ほど同様、数字を当てはめてみよう。
まず□に1を当てはめると「1×0=0」なので「0÷0=1」、□に2を当てはめると「2×0=0」なので「0÷0=2」、□に4/3を当てはめると「4/3×0=0 」なので「0÷0=4/3」、□に0.567を当てはめると「0.567×0=0」なので「0÷0=0.567」となる。
お分かり頂けただろうか…。「□×0=0」のため、□に当てはまる数がどのような数でも「0÷0=□」が成り立ってしまうのだ。
森山氏は「なんと『0÷0』の計算結果は、なんでもアリなのです!」「こうなってしまうと『0÷0』の計算結果で、何を書けば良いのか分からないですよね…。そのため『「0÷0」の計算結果は1つに決まらない』という意味で、『0÷0』は計算できません」と、補足している。
では、今回話題となった「18÷0」のように、「0でない数字」を0で割った場合は、どうなのだろうか。
こちらも割り算「(0でない数)÷0=□」を、かけ算にすると「□×0=(0でない数)」。しかし前出の通り、数字に0をかけると答えは0になるため、答えを「0でない数」とするのは不可能である。
つまり、まとめると…
(1)「0÷0」の計算結果はなんでもアリ。計算結果を「1つに決められない」ため、計算不可
(2)「(0でない数)÷0」の計算結果は「存在しない」ため、計算不可
となり、これらの事実から「数字を0で割る」計算は不可能なのだ。つまり今回のケースは、ちゃーろーさんの娘が回答した「こたえなし」が正解となる。
では、担任の指導通り「数字を0で割ると0になる」と認識してしまった場合、どのような弊害が考えられるのだろうか…。