斎藤知事のパワハラ問題での失職から再選までの経緯

 2021年に改革派知事として兵庫県知事に就任した斎藤氏への風当たりが強くなり始めたのは今年3月。県の西播磨県民局長(当時)が斎藤知事のパワハラや出張先などでの贈答品の受領などを告発。局長は4月には県の公益通報制度を利用して内部通報したが、県から公益通報の保護対象とされず、停職3カ月の懲戒処分を受け、7月に亡くなった。自殺の可能性が高いとみられている。懲戒処分が出る過程では、斎藤知事は職員から処分については公益通報窓口の調査結果が出るまで待つべきとの見解を示されたが、人事担当部門に公益通報の結果を待たずに処分できないかを弁護士に確認するよう指示し、最終的には局長の告発行為を誹謗中傷と認定し、調査結果を待たずに処分を決めたことが明らかとなっている。

 このほかにも、県議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)が県職員へ行ったアンケート結果などにより、以下の斎藤知事による職員へのパワハラ行為や問題行為が疑われている。

・公用車で出張先を訪れた際、エントランスから約20メートル離れたところで停車し歩かされたことを理由に職員を怒鳴った。

・職員らを前に机を叩いて激高したり、幹部などに対してチャットで深夜や休日に業務指示を出していた。

・会議が開かれたホテルで急遽、事前申込制のレストランで夕食をとりたいと職員に言い、断られたことを伝えられると「俺は知事だぞ」と激怒した。

・配布資料やチラシなどに自身の顔写真やメッセージが掲載されていないと叱責した。

・出張先でお土産を要求して持ち帰ったり、民間企業から贈答品を受領していた。県職員が土産に用意されたカニの受領を拒否した際、斎藤知事はそれを持って帰ったこともあった。

・出張先で撮影した自身の写真の写りが悪いと怒鳴った。

・職員にモノを投げつけた。

・エレベーター前で待たされると機嫌が悪くなったり、目の前でエレベーターの扉が閉まって乗り損ねたりすると、職員に「お前はエレベーターのボタンも押せないのか」などと怒鳴りつけた。

・公用車で移動中に気に入らないことがあった際、助手席のシートを後部座席から蹴った。

・県の旅費規定を超える宿泊料の高級旅館に宿泊していた。

 なかでも問題視されているのが、前述の県の公益通報制度を利用して通報した西播磨県民局長(当時)への対応だ。公益通報者保護法では通報者への不利益な扱いは禁じられているが、斎藤知事は保護の対象にならないとして局長の懲戒処分を決断。3月には片山安孝元副知事が元局長への事情聴取を行い、

「俺の悪口もよう書いてあったけど。勤務中にやっとったんちゃうんかい。どないやねん」

「名前が出てきた者は、一斉に嫌疑かけて調べなしゃあないからな。 いろいろメールのなかで名前出てきた者は、みんな在職しとるということだけ忘れんとってくれよな。手始めに●●(編注:職員の名前)あたり危ない思うとんやけどな」

などと詰問していたことも判明している。

 県議会は百条委員会を設置し、斎藤知事への証人尋問も行われたが、斎藤知事は元局長への処分について「手続きに瑕疵はない」と主張しており、一貫して辞意を否定。9月19日には県議会の各会派などが提出した知事の不信任決議案が全会一致で可決され、失職した。

 今月17日に投開票された兵庫県知事選挙では、当初は斎藤知事の落選は濃厚との論調も強かったが、蓋を開けてみれば斎藤知事は3年前の当選時から約25万票も多い約111万票を獲得して当選。次点で県内の22の市長から支持を受けた稲村和美・尼崎市前市長に14万票の差をつけての圧勝となった。選挙の投票率は前回(2021年)を14.55ポイント上回る55.65%となり、県民の関心が高かったことがうかがえる。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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