17日に投開票された兵庫県知事選挙で当選した斎藤元彦知事。兵庫県のPR・広報会社、株式会社merchu(メルチュ)の代表・折田楓氏が斎藤知事の選挙活動においてSNS戦略の企画立案・運用を担ったとサイト「note」上で公表し、斎藤陣営から報酬が支払われていた場合は公職選挙法違反の可能性があると指摘されている問題で、斎藤知事の代理人弁護士は25日、Business Journalの取材に応じ、SNSの運用や企画立案を委託した事実はないと説明した。メルチュ社に支払った70万円はポスターのデザイン制作など法的に有償での委託が認められた項目であり、その内訳である計5項目を近日中に公表するとしている。

 斎藤知事の代理人弁護士との一問一答は以下のとおり。

――メルチュ社への支払いについて。

代理人「支払いはあります。それが法的に認められたものであるという見解です」

――SNS運用に関する業務をメルチュ社へ委託していないということか。

代理人「そうです」

――つまりメルチュ社はサイト上で虚偽の説明をしているということか。

代理人「なぜ、こうなってしまったのかというのは、こうなってしまった以上は(メルチュ社と)連絡の取りようもないので、取るべきでもないでしょう」

――請求書の内容は公表するのか。

代理人「支払い済であることがわかる請求書は、収支報告書に載るものではありますが、こうなっているので(兵庫県の選挙管理委員会への提出期限である12月2日より)先行して出すことを検討しております。

――費用の項目明細はあるのか。

代理人「全部で5項目ですが、振込の明細には出ておりません。(請求書の記載項目は一括で)『デザイン制作費』です」

――その明細にSNS運用は書かれていないのか。

代理人「ないです」

――明細は公表するのか。

代理人「(選挙管理委員会への収支報告書の提出まで)引っ張らずに出そうと、早く出そうと。個々の報道関係者様に出しているとキリがないので、どこかに出せないのかというのも検討しているところです」

――SNS運用はすべて斎藤陣営で行っていたということか。

代理人「そうです」

――メルチェ社はなぜ、このようなことを言っているのかは、よくわからないということか。

代理人「そうです」

どちらかが虚偽の説明

 メルチュ社の代表・折田楓氏は今月20日、「note」上に、同社が今回の斎藤知事の選挙活動の広報全般を任され、監修者としてSNSの運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定などを責任を持って行い、具体的には以下を担当したと主張していた。

・コピー考案、メインビジュアル作成、デザインガイドブック作成(選挙カー・看板・ポスター・チラシ・選挙公報・公約スライドの制作に利用)

・SNSのハッシュタグを「#さいとう元知事がんばれ」に統一

・X(旧Twitter)本人アカウント、X公式応援アカウント、Instagram本人アカウント、YouTube公式チャンネルの管理・監修・運用

 また、以下のとおり会社の業務として取り組んでいたとも綴っている。

「そのような仕事を、東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたいです」

「『広報』というお仕事の持つ底力、正しい情報を正しく発信し続けることの大変さや重要性について、少しでもご理解が深まるきっかけになれば幸いです」

 デジタルマーケティング会社のプロデューサーはいう。

「複数のアイテムで使用するためのビジュアルのデザイン料としては、70万円というのは相場的に妥当な金額でしょう。また、SNS戦略の立案から運用まで全般の業務を専門的なノウハウを持つ会社に委託すれば100万円くらいかかることもあるので、この70万円にデザイン料とは別にSNS関連の費用が含まれているとは考えにくいです。もちろん、メルチュ社が実績づくりのために手弁当で無償で行っていた可能性はあるでしょうが、実際にどうだったのかは分かりません」

 選挙取材経験のある全国紙記者はいう。

「斎藤知事側の主張が正しければ、メルチュ社がサイトに投稿した内容はすべて虚偽ということになるし、もしメルチュ社の投稿した内容が事実であれば、斎藤知事側が虚偽の説明をしていることになります。現時点ではメルチュ社は沈黙を貫いており、メルチュ社がSNS運用業務の委託を受けていたというエビデンスを示さない限りは、斎藤知事の主張が正しいということになります。気になるのは、斎藤陣営には顧問弁護士や選挙に詳しい人物がついており、選挙活動でも常に違法行為がないかをチェックしているでしょうから、SNS運用を有償で第三者に委託してはいけないという公選法上の基本的な禁止行為を知らないはずはないだろうし、果たしてそんな初歩的なミスをするのかというのは少し疑問を感じる。双方の間で何らかの認識の食い違いがあった可能性もあるが、メルチュ社による説明を待つほかない」