ソン・フンミン(左)鎌田大地(右)写真:Getty Images

 クリスタル・パレスに所属する日本代表MF鎌田大地が、11月9日のホームでのフラム戦で相手選手へのタックルで一発退場した際に、フラムのサポーターから人種差別発言を浴びるという出来事があった。本人は「今までも散々言われてきている。僕自身は聞いていなくて、全然知らなかった」と語った。

 また、今年6月には、トッテナム・ホットスパーに所属するウルグアイ代表MFロドリゴ・ベンタンクールが、母国のテレビ番組で司会者から同僚の韓国代表FWソン・フンミンのユニホームを求められた際、「ソニー(ソン・フンミン)の?ソニーのいとこのものかもしれないよ。みんな同じように見えるから」と発言。これが人種差別的だとされ、イングランドサッカー協会(FA)から7試合の出場停止処分と罰金10万ポンド(約1,900万円)を課された出来事があった。

 ソンはベンタンクールから直接謝罪を受けこれを受け入れたのだが、FAは規則E3項1条に基づく「フィールド内外での侮辱的、攻撃的、または不適切な言動などの悪質な違反」に抵触するとして処罰に踏み切った。さらに規則E3項2条では「人種、性別、宗教、性的指向などを理由とした差別行為は、加重違反としてさらに厳しい処分が科される」とあり、当事者同士では問題が決着しているにも関わらず、重い決定が下された。

 ソン・フンミンも鎌田も海外でのキャリアが長いため、“差別慣れ”してしまっているかのような反応だ。しかし、、スタジアムのみならずSNS上における人種差別的な行為は増加の一途を辿り、黒人選手に加え、日本人や韓国人選手に向けられたものも目立ってきている。

 それだけプレミアリーグにアジア人が進出していることの証しともいえるが、同リーグが25年にわたって非営利反人種差別団体「Kick It Out」とのパートナーシップを結び、2019年には「No Room for Racism(人種差別に余地なし)」をスローガンに掲げ厳しい規則を設けながら、なぜスタジアムから差別がなくならないのか。