セブンイレブンを巡る買収攻防がそろそろ山場を迎えると思います。ご承知の通りカナダのアリマンタシォン クシュタール社が仕掛けた買収提案は、買収提案額の引き上げ後、セブンの代表取締役副社長の伊藤順朗氏と持ち株会社の伊藤興業が実質的なMBOを提案。現状、この2つのオファーについて駆け引きが行われている状況です。
本件は既に本ブログで何度かトピにあげているので「またか」と思われるかもしれません。ただ、私は事業家としてこのような大きなディールの時はそれがどのように展開するのか極めて高い関心があり、自分がその場にいたらどうするだろうという想像を巡らせ、最新のビジネス交渉の駆け引きを頭に描くようにしています。そうすることで自分が仮にその1万分の1の小さなディールに出くわしたとしても「こうかな」「あぁかな」と考えるネタになるのです。
私はこのディールについて既にカナダ社に分がある、と申し上げています。第三者的な公平な目からすればカナダ社と取引するほうが正しいように見えます。
伊藤家は言うまでもなくイトーヨーカ堂の創業者、故伊藤雅俊氏のファミリーであり、伊藤興業はファミリー企業であり、持ち株会社です。伊藤雅俊氏は鈴木敏文氏と出会い、鈴木氏が主導して作り上げたのがセブンイレブンの事業であり、書物を読む限り伊藤氏と鈴木氏は性格的に水と油に近い感じもします。その鈴木氏もセブンから降り、伊藤氏は23年に亡くなります。息子さんの伊藤順朗氏が現在、セブンの重役となり、伊藤家の存在感が鈴木氏がいなくなったことで相対的にアップしたということになります。
ここでカナダ社から買収提案を受けた伊藤氏としては個人の想いとしてこれを外国のライバル企業に取られるわけにはいかないと考えたのでしょう。これが伊藤氏のMBOに踏み切る最大の動機です。つまり私から見れば会社を所有物と捉え、その所有権を手放さないことを第一義と考えているように見え後ろ向きのMBOに映るのです。